File No.056CABIN Y.Yさん work:化粧品メーカーマーケティング

山小屋を思わせる空間で
深呼吸しながら暮らす。

ものづくりが息づく街に存在する「CABIN」の部屋。
キャンプや旅、アウトドアの楽しさを発信する人気インスタグラマー「YURIE」プロデュースによる部屋は、「外でもなく家でもない」、都心でソトアソビを体感できることをコンセプトにダイナミックにリノベーション。
かつて見たことのないオンリーワンの空間となっている。

山小屋やキャンピングカーでの体験をヒントに、都会での暮らしを違う視点で楽しむためのギミックをふんだんに詰め込んだ部屋は、チェックどころ満載。

木目の美しいタモ材やヒノキを使った天井など自然素材を惜しみなく使った室内はグレーで統一され、洗練されたイメージもプラス。
リビングから3段の階段を上がった窓際スペースは寝室想定で作られており、デスクを設けることでちょっとしたお籠り書斎にも。

階段下は収納スペースとして活用し、テントや椅子など大きくてかさばるモノも余裕でしまえる造りとなっている。

玄関から続く土間は、靴のまま歩いたり道具を手入れするなど、ひらめき次第でどんな風にも使える多様性のある場所。

しかし、現在CABINの部屋に暮らすYさんはアウトドアとは少し違った視点でこの部屋を選んだ。

「まず、インテリアのイメージがしやすい部屋だと思いました。自分はずっと転勤族で、今回で引っ越し6回目。移動が多いので、身軽になるため入居の際はこれまでの家具をほぼ売りました。ここに来てから新たに買ったものは少ないですよ。それでも家自体がシンプルでお洒落だから余計なモノを置かなくてもかっこよくなるんじゃないかな…って。」

ホワイト系のフローリングも数少ない手持ちの家具のテイストにぴったりマッチした。

探している中で、会社へのアクセスや立地、部屋の雰囲気もここが一番良かったし友人たちも「ここが一番良い」と口を揃えて言ってくれた。
Yさんが入居して半年ほど経った現在。
そのライフスタイルはどのように変化したのだろう?

玄関から続く土間は、タフに自由に使える生活通路。土間を過ぎればパーッと解放感のあるリビングへ。縦長立地のメリットを最大に活かした、気分さえもゾーニングできる特別な仕様。自然素材をふんだんに使った部屋全体には「見せる」&「隠す」収納がバランスよくほどこされ、暮らしやすく居心地の良い造りとなっている。

独立洗面台の有無は、暮らしやすさの需要ポイント。この部屋は広い独立洗面台と脱衣所があるため、日常動作もスムーズ。寝室スペースの階段下には大き目の収納棚があり、季節アイテムや普段使わないモノなどを入れるのに便利。スペースの無駄が一切ない。



「家っぽくない」。そんな
非日常感もやがて日常へ。

ミュージアムかアトリエのような風情のあるYさんの部屋。
さりげなく飾られた植物は白い壁に美しい影を作り、ソファに座ればなんだか心がゆっくりと浄化されていくよう。

「生活感はできるだけ無くしたいです。服などはあまり買わないし、モノが少なくても苦じゃない。そのかわり好きな植物や土物陶器をはじめ、和紙や木を使った作家さんの作品やお気に入りブランドの食器などはわりと買ってしまいます。」

もともと陶芸が好きで、一時はろくろを購入しようか本気で迷っていたほど本格派なY.Yさん。
棚いっぱいに置かれた陶器や植物たちが、Yさんの穏やかな人柄を教えてくれる。

厳選された作品だけが存在する空間。
静寂のなか、アートの世界に思う存分浸れる美術館にも通じるものがあるような。

生活感があるのは決して悪いことじゃない。
けれど、住人であるYさんが心から心地よいと思える空間を心掛けていったら、今の形となった。
それでもまだ途中の段階。

仕事で海外担当もしているため、英語は必須。
リモートワークをしたり英語を勉強したり何かと忙しい毎日を送るYさん。
業務や勉強にとことん集中できるほど静かで快適な住環境は、何にも代えられない。

テレビはできるだけ大きい型を置きたかったので、コンクリート板とブロックで台を自作。
(材料費は5000円もかかっていないという)
隣には植物のための台を同じ材料で作成。
どちらも土間のグレーとマッチして、風景にすっかり溶け込んでいる。

「CABINは、床や壁など部屋全体の明るい色味が好き。手持ちの家具にも嬉しいほど合うし、なんていうか『家じゃない』感じが好きなんです。」

自宅なのに、「家じゃない」。
普通の部屋では決して味わえないCABIN独特の特別感が、Yさんはたまらなく好きだという。
そしてそんな感覚さえもいつの間にか日常のものとなっている。
ライフスタイルの向上と進化って、こういうことなんだ。

キッチンカウンターは、リモート会議などの際にとても有効。ワーキングデスクだけでなく、ある時は食卓に、ある時は友人と語らい合うダイニングテーブルにと早変わり。グレーのカウンターに、厳選したビンテージのYチェアの深いグリーンが良く映えている。

「籠れるから心底落ち着く」という小さなベッドスペース。キッチンカウンターは食事や仕事をするスペース、隣にあるリビングのソファはテレビ鑑賞やリラックス&仮眠などに欠かせないスペース。部屋の造りで明確にゾーニングができるから、オンオフが上手に切り替えられる。



24時間のほとんどを
過ごしても足りないくらい。

キャンプなどから帰ってきた際に、濡れたり汚れたりした道具をそのままベランダへ持ち出すことを予想して。

玄関からベランダまで土間続きになっているので土足のまま一直線に通れる造りになっている。
あらゆる「作業」をするのにもってこいのCABINの部屋。

Yさんの場合は、リビングスペースの床に腰掛けて土間に道具を広げ、ていねいに珍奇植物の世話をする。
なんとも優雅で、情緒のある使い方だと思う。
土や肥料などの袋、道具類はベランダのキャビネットに入れ植物の手入れをし終わったら、そのまま目の前の棚に飾る。
ここだからこそ実現する、流れるようにスムーズで美しい作業動線。

「カフェで過ごす時間も素敵だけれど、周りも静かだし好きなモノに囲まれたこの部屋に居るほうが断然落ち着くし、心地イイ。むしろ家から出たくないです(笑)」

九州で植物を作っている職人のもとへ自ら出向き逸品を見つけては買い付ける。
南青山にある花屋「はいいろオオカミ」で購入したタンポポの綿毛のオブジェを寝室に飾る。
福岡の作家から押し花を教わり、自分で身近な草花を押し花にしてインテリアとして飾る。

Yさんの広い行動範囲と幅広い交友関係。
そして行動力、美への情熱はものすごい。

そしてYさんの好きな世界からは優雅さだけでなく生命へのリスペクトを感じる。
ライフスタイルや好みは、CABINのもともとのコンセプトであるアウトドアやキャンプのマインドとは少し違うけれどこれはこれでとてもフィットしているよう。

改めて、ここは住む人によって全く違う世界を見せてくれるまっさらなキャンバスのような空間なのだと感じる。

ユニークな形の「珍奇植物」が大好きだというYさん。植物を入れる焼き物の器にもこだわりを持っており、棚にはコレクション作品がずらりと並んでいる。「その辺の空き地にさりげなく生息する身近な植物」だけど、押し花にしてガラスフレームに美しく飾れば、オンリーワンの極上インテリアに。

ひときわ目を引く美しいキャンバスアートは、和紙職人に直で「部屋に合うものを」と依頼して作ってもらった一点もの。キッチン棚にさりげなく置かれた米びつやコーヒー豆の器には機能美あふれるピーター・アイビーのアイテムを用いて、洗練された雰囲気に仕上げている。

Text: Yuzuka Matsumoto
Photograph: Hiroshi Yahata