File No.065Chic D.Kさん work:インフルエンサーマーケティング

部屋をベースに自分の好みを掛け合わせて
広がるオリジナルシックな空間

窓からは東京タワーを間近に望み、いっぱいの日光が打ちっぱなしの白壁に反射する。ヘリボーンのアクセントが効いたアパレルショップのような雰囲気を持つこの部屋を見た時に、「自分の持ち物と合いそうだったので、ここに住むことが一気にイメージできた」と、Kさん。

前職で勤めていたアパレルショップの同僚からREISMを教えてもらった。物件を吟味する中で、ウッド調のインテリアが好きだったことから「Chic」の部屋へ入居を決めたのだという。

「廊下のウォークインクローゼットや打ちっぱなしにホワイトペイント、剥き出しの配管が醸し出しているこの部屋の全体的なムードが好きですね」

インテリアのこだわりは部屋全体の景観と、高さのバランス。例えば、一番お気に入りは鉢と観葉植物は奥から高く、陶芸品、ディフューザーへと段々低くなっており手前に花瓶や時計などを置いてまた高さを出している。
その中央に配置されたフレームはビンテージショップで見つけたもの。額縁風に立てかけ、お気に入りのポストカードを貼り付けた。こうした細部への自分なりのアイディアは、コストをあまり掛けずにおしゃれに見せたいというKさんの哲学が根本にある。

「鮮やかな織のテキスタイルは、テーブルクロスにしたかったのですが床に敷いたラグとぶつかり合ってしまったので、プレーンな壁にアクセントとして配管にかけました」 フレームには知人にもらった洋書のページを切ってコラージュ。スマホケースにステッカーなどを挟むところからアイディアを発展させたのだとか。ピクチャーフレームへ斜めにかける一捻りの創造性が、オリジナル空間へと底上げしている。



「安くていいものをディグるのが好き。益子市に行って焼き物を探してみたり、よく行く渋谷では気になるお店へふらっと入ってみたり。気になったものは、その場で購入。家に持ち帰ってみてからいろんな場所に置いて検証するので、マッチしなかったものもこれまで結構買いましたよ」

トライアンドエラーがあるからこそ、斬新なインテリアのアイディアが湧き出るのだろう。インスピレーション源や参考にしているサイトや人がいないと言うから驚きだ。

この一見完璧かつ完成され切ったかのような空間も、まだまだ変容していく伸び代があるのだとか。

「ベッドと冷蔵庫の配置はざっくりと内覧の時にイメージした場所で決めましたが、その他のアイテムは最初の頃から結構変えています。新たなインテリアを買い足すごとに、バランスを見て変えているので今も、これからもどんどん変わっていく最中ですね」

インテリア全体の統一感を出すために意識していることは、高さ以外に「それぞれのアイテムのエレメントを拾うこと」。冷蔵庫やゴミ箱にあるステンレスの素材をキッチンに置くことやグリーンの時計と浮き玉、グリーンのグラスなど、部屋全体に共有する素材や色がある。

「部屋自体がヘリボーンや打ちっぱなしでおしゃれなのでインテリアアイテムがなんでもかっこよく見えてくる。そのおかげで、これまでだったら買わなかったような雑貨やアイテムにも挑戦するようになったかもしれません。観葉植物は今までの自分だったら、置かなかった。前の部屋では、自分の好きなものを揃えていくことを最優先に部屋作りをしていました。しかし、好みの物同士がチグハグになってしまう箇所が出ていたんですよね。今は部屋の雰囲気を基準にしてセレクトするようになったので、今までだったら買わなかった自分の好みとは違ったものも置きつつ全体的に調和のとれた部屋作りができていると思います」

この部屋に置いてみたら好きになれた物も多いという。

また、前職のアパレルではドレスのセクションに所属していたことから、部屋のいたるところにクラシックでオールドスタイルな要素も垣間見れるだけでなく、ディスプレイがショップのような空気を演出している。

小物の配置、アイウェアやタイの収納も自然と身についていたショップ店員ならではと言えるだろう。

自身のファッションスタイルは今も変わらず、カジュアルさとドレッシーなポイントを掛け合わせたジャケットスタイルがメインだ。クローゼットが意外にもコンパクトに収まっているのは「着ないものは売ったり、あげてしまったりしている」から。今の自分に必要な物だけを見極め、手元に置くのがKさんなりの服との向き合い方。



洗練されたセレクトショップを思わせる収納技。毎日身に着けるアクセサリーは武骨なプレートの上にディスプレーし、メガネやキャップ、バリエーション豊富なタイはセンス良くそして手に取りやすく棚へ収められている。



“好き”が生み出す 自分らしさを感じる暮らし

部屋全体が自分の好きなものだけで作り上げられることが一人暮らしの妙理と言うなら、Kさんはまさにその醍醐味を味わい尽くしているように見える。

自分の審美眼で選び抜いた品々を、独自のセンスで置き変え、楽しむ。同時に、ライフスタイルも自分のペースを大切にできる。

「ここに引っ越してきてからギターを始めました。前職はアパレルの販売員だったこともあり、在宅で仕事をすることもなかった。今は家で過ごす時間が増えたのと、新しい趣味を始めたかったんですよね。音楽は90年代のJ-POPが好きで、Mr.Children、サザンオールスターズを練習中。夜にリフレッシュタイムとして弾いています」

家での時間も大切にしているが、基本的にはアウトドアとのこと。休みの日は洋服好きな前職の同僚や先輩と古着屋を巡るのだそう。

「ドライブにもよく行きます。最近は彼女と群馬県・妙義山でグランピングをしました。お酒が飲み放題で、宿付き。朝は山の中でヨガしていい時間を過ごしました」



職場からの立地重視で部屋探しをしたというKさんは、自宅から徒歩20分の場所にある広告代理店勤務兼事務所に勤務。販売員は楽しかったが、将来を見据えたキャリアアップのために転職を決意し、SNSやテレビ広告、クリエイターのプロダクションなど多岐にわたる事業を展開する会社で、インフルエンサー事業部でプロデューサーとして日々奔走している。

同時進行するプロジェクトが時には20件になるため、しっかりと休みをとることが難しいという。期日に追われながら、前職とのギャップを乗り越え奮闘中だ。

「いつかまたアパレル業界には戻りたいと考えています。次はアパレル系の広告代理店を視野に入れ、ゆくゆくは大手ブランドのプレスになれたらと。最近は家具が好きになってきたので、ファニチャーブランドもいいかもしれないです。今の仕事を経験したことで、やはり自分が好きなことに携わっていたいと再確認できました」

Instagramに反応が来ることも嬉しいし、発信することが好きだと語る。さらにクリエイティブなことも好きだと言う。確かに、インテリアのハンドメイドアイテム一つとってもKさんならではの創造性を感じられる。

好きなものに囲まれた空間から生まれるモチベーションをバネに、インテリアだけでなく、ライフスタイルまで着実に独自にやり方でステップアップしていくのだろう。

レザーシューズが並んだ靴棚から、スタイルに合わせた一足を丁寧に選ぶ。小物入れは床の素材と親和性を感じるウッドプレートとセットのものに家の鍵と財布を。



Text: Marin Kanda
Photograph: Hiroshi Yahata