File No.38Organic T.Sさん work:マーケティング系

高級感あふれるホテルライクな空間に、
心地よい時と風が流れる。

昔ながらの商店街がつづき、都心でありながらどこか馴染みある
温かい街。閑静な住宅街にある「Organic」の部屋。

大人のためのリラックス・リノベーションを目指した「Organic」は
玄関から続く重厚な床タイルと、品良くあしらわれた木の意匠で
リッチな雰囲気を醸し出している。

「職場から近い物件をずっと探していました。でも普通の物件って
 なんだか違和感があって…。もうこうなったら自分である程度
リノベーションするしか無いかなあ、なんて思っていた矢先に
ここを見つけて。こんな面白い物件があるんだ!と驚いたんです」。

コンセプトがハッキリしていて振り切っている感じもいいし、
デザインが統一されているのがとても気に入ったと言うSさん。

ベッドスペースとキッチンスペースがさりげなくゾーニングされ、
シーンに合わせて自分流に楽しめるのも嬉しいポイント。
爽やかな風を通す木のルーバーは、玄関から寝室への視線を遮るだけでなく
窓から差しこむやわらかい光を届けてくれる。どこを切り取っても
プレミアムで、すがすがしい気分が満喫できる空間だ。

部屋ではよく勉強をしたり本を読んだりするけれど、
料理に割く時間も以前より断然増えたというSさん。

「出来合いのお惣菜ではなく、できるだけ自分の料理を食べたいので
マメに作っています。忙しい時は週末に作り置きしたり…。
だから次にまたREISMさんの物件に住むとしたら
『Kitchen』の部屋もイイかなあ、なんて密かに思ってます(笑)」

そんな、日常をきちんと楽しむ適度な生活感に触れると
ちょっとほのぼのしてしまう。カッチリしがちな
ホテルライクな部屋だけに、その効果は絶大。

コンセプトに合ったインテリア、家具配置やチョイスの
センスの良さ、居心地の良さに至るまで、すべて満点。
Sさんの見事な住みこなしぶりには、感動しきりだ。

料理を作ることが大好きだから、充実の設備を備えた使いやすいL字型のキッチンは満足度が高い。調理時以外にも、本を読んだりお茶を飲んだり…気づけば何かにつけここで過ごしているという。Sさんにとって特にお気に入りのスペース。

見せる収納は、衣類など身につけるモノ限定。部屋自体の色彩が美しく統一されているので、よけいな色のついたモノは極力隠すように徹底している。生活必需品も魅力的にスッキリと見え、まるでショールームに居るような感覚に。



パーフェクト過ぎず、ちょっとした
ユルさもプラス。より快適な空間へ。

「この部屋に来た友人から『お洒落ですごく良いんだけど、
よくここで生活できるね』と言われたことがあって。あまり
生活感を出さずに理路整然レベルでキレイにしちゃうと
そう感じるのかなあ…と、ちょっと考えされられました。」

以来、Sさんは自分なりのユルさをプラスすることを意識している。
かつて建築学科に所属し、人が快適に過ごせる空間造りの
ノウハウをしっかりと習得しているSさんだけに、
「計算されたスキを作る」という上級テクニックだってお手のもの。

さりげなく置かれた植物やSさんの趣味だという
コケリウム作品は、たしかに見ているだけでリラックスできる。
ふんわりとやさしいアクセントが、適度なユルさを保っているよう。

それでも、決して雑多な空間にはなっていない。
絶妙なバランスを保っているのは、Sさんが
徹底してルールを守っているから。

・部屋の雰囲気が良いので、絶対にそれを壊さない
・家具も小物もorganicカラーで統一。茶色と紺色をベースに
・本は、装丁の色でバランスが崩れるので表に見せずに収納
・1個新しいモノを買ったら、代わりに他の何かを1個捨てる
・シンプルなデザインのモノを選ぶ

部屋のコンセプトをしっかりと定めているからこそ、
ユルさはあっても絶対にブレない。

「近々、ベランダにもイスやテーブルを置いて
色々使える友人たちと過ごせる場にする予定です。」

嬉しそうに語るSさんの笑顔からは、
「真剣に空間を考え、遊ぶ」という気持ちが伝わってくる。
その引力はきっと、遊びに来る仲間を全員
リピーターにさせてしまうほど強力なものだと思う。

寝室と玄関スペースをきっちりとゾーニングしてくれるルーバーは、自然光や照明の光の加減でさまざまな風景を創り出す部屋の象徴的存在。身支度しやすい動線を考え、玄関先に置いた木製フレームの全身鏡は入居時プレゼントの物。質感も大きさも、とても気に入っていると言う

寝室にはしっとりとすがすがしい天然の植物を多めに配置。やさしい空気が流れ、質の良い睡眠をいざなってくれそう。質感が気に入っている床では、時に裸足で過ごす。いつでも気持ちよく過ごすため、床掃除はワイパーで丁寧に。



ヒトが集まる空間を作ることで、
よりアクティブにクリエイティブに。

「大きなダイニングテーブルは、たくさんモノを広げられて便利なだけじゃないんです。仲間が集まった時にディスカッションしたり
ワイワイごはん食べるのにも、すごく良いサイズなんですよ。」

部屋では、本当に好きなことしかやりたくないSさん。
友達やその友達など、人をたくさん呼んで
大きなテーブルを囲んで仕事の話をするのも大好きだ。

さまざまな個性がぶつかりあうことで色々なアイディアが生まれ、
ひいては自分の刺激にもなり考えをまとめるのにも役に立つ。
人と過ごす時間を意図的に増やすことで、一人の時間も際立ち、より自分の時間を大切にできるのだと言う。

「できるだけオンオフの切り替えもしたくない。
居住空間でありながら、仕事と切り離さない空間にしています。」

Sさんは、この部屋に3つの顔を持たせている。
高級感あふれるホテルライクなダイニングキッチンスペース、
オーガニック感と開放感あふれるバルコニースペース、
グリーンを効かせリラックスできるベッドスペース。

色々な顔を持たせることで、集まった人たちの
インスピレーションや感性も自然と高まっていく。

自分一人の部屋と言うよりも、むしろここを
人が集まるオフラインサロンのようにしたい。
そのために、みんなにとって居心地が良い空間造りをしたい。

「目指すのは、『みんなのリビングルーム』。色々な夢や
考えを持つ人たちがたくさん集まってくれたら良いですね。」

建築学科を出て、農学部の大学院を経て現在のマーケティング畑へと
飛び込んだSさん。優れたアイディアを持つ人たちが
世の中にはたくさんいる。それらを、きちんとカタチにし流通し、
クリエイターの幸せへとつなげるために、マーケティングも
勉強したいという考えから今の仕事を選んだ。

部屋だけでなく、ライフプランやライフスタイルすべてに
どこまでも「ヒトのため」「未来のため」という意志が感じられる。

そんなSさんの在り方に、ここを訪れる人全員が
必ず心を動かされることだろう。

大学時代、文化祭の時に作った建築物の模型。見事プロの目に止まり、実際に夏フェスのブースとして使われた。暑い夏の日差しをやわらげてくれる木漏れ日を再現した建築物は、「ヒトに優しい設計」そのもの。Sさんの人柄が現れているよう。

頭の中に浮かんだイメージを絵にする。コケリウムで小さな器の中に深く広大な自然の森を再現する。ゼロの状態からカタチを作っていく作業が好きなSさんにとって、ここは生活するだけの場ではない。自身の思い描いたイメージを解放できる理想のアトリエだ。

Text: Yuzuka Matsumoto
Photograph: Hiroshi Yahata