歴史・アート・生活が日常に溶け合う「谷根千」

東京23区の中心にほど近く、文京区と台東区をまたがるように位置するエリア「谷根千」。言わずと知れた「谷中、根津、千駄木」の頭文字を取った通称で、戦災の影響をあまり受けず、大規模開発からも逃れてきた昔ながらの街並みが残っている。そのためか山手の一角ながらも、下町情緒とそこから生まれる厚い人情を感じられる街として全国各地から人が集まる人気スポット。中には海外からの観光客も多く、老若男女問わず様々な人が行き交う光景を見ているとその人気ぶりを肌で感じることができる。また、ターミナル駅として名高い上野駅の西側に位置し、複数の路線が乗り入れる日暮里駅と、メトロ千駄木駅の両駅を徒歩圏内で利用できるため、通勤・通学等のアクセスも全く気にならない。今回はそんな「谷根千」エリアに住む魅力をお伝えしたいと思う。

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ノスタルジックな街並みに
身も心も預けてみよう

このエリアの有名な歴史建造物と言えば「根津神社」。4月のこの時期になるとつつじ祭りが開催され多くの人でにぎわい、その門前町として栄えた職人の街だけあって、周辺の飲食店も隠れた名店が数多く並んでいる。しかしそれ以外に、数多くの歴史を感じさせる建物が所狭しと密集しており、特に寺院の数は谷中地区だけで70以上にも及ぶ。もともと江戸時代に上野寛永寺が建立されたことが谷中寺町の始まりと言われていて、閑静な住宅街に突如現れる重厚な造りの寺院はもちろんどれも違った表情を持っており、散策していると次々と別の建物が気になりどんどん足を運んでしまう。(ただし、関係者のみしか中に入ることができない寺院が多いので中に入る時は注意が必要)「谷根千」には幅広くスポットが存在するので、何気ない休日に気の向くまま歩いていると意外な発見が見つかり、気づけば充実した一日になることも多いエリアなのだ。

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歴史とアートの相乗効果

「谷根千」には江戸時代から様々なものづくり職人が住み、本郷に東京大学ができてからは夏目漱石や森鴎外などの文化人がこの地に住み、ここを舞台に執筆を行った著者も多い。そのような昔からの伝統を引き継ぎ、近年ではクリエイターがこの地で工房を構えたり、ギャラリーで個展を行うなどアートの街としての魅力も持ち合わせている。そのためギャラリーや美術館をエリア各地で見かけることができるが、それら建物自体も外観はそのまま残しながら中を改築したユニークなものから、文化財に登録されるほどの歴史溢れる建物まで、「谷根千」ならではの空気感を残しつつも今の時代に合わせながら進化している。それらが見事に周辺の住宅に馴染み、その上、アートに影響されてか一般の住居も目立ちすぎないセンスあるデザインを持っているものもあり、日常生活しているだけでも刺激を与えてくれそう。時間があればふらっと中まで立ち入り色々なアートに触れてみるのもこのエリアの楽しみ方の一つ。

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地元住民によって作られた、
下町風情溢れる商店街

夕焼けだんだんと名付けられ、ネコの憩いの場としても使われている階段から街を見下ろすと、まるで昭和にタイムスリップしたかのような感覚に。そこから見えるのは「谷根千」で最もにぎわう商店街「谷中ぎんざ」。細い路地にも関わらず、たくさんのお店が集まり多くの人が行き交い、下町ならではの人情味が溢れていてだれでも地元感覚になることができる。その光景を見ていると戦後に自然と発生した商店街と言われることも納得できる。ここには行列のできる惣菜屋さんがいくつかあり、他のエリアでは気になりつつ食べ歩くことに遠慮がちだった人でも、この地元感溢れる「谷中ぎんざ」では恥ずかしい気は全くしない。むしろ1000円程度で楽しめてしまうので、次から次に手を出してしまうことになるだろう。何気ない日常の中でも刺激や楽しさを与えてくれる「谷根千」エリアでの生活は、自分らしいライフスタイルを実現できるきっかけが見つかるはず。きっと充実した毎日を送っていただけることでしょう。

※この記事は、REISM MEMBER NEWS(2013年4月25日配信)のアーカイブです。