軽やかなラタン素材を取り入れて、たちまち爽やか気分

しなやかで優しい印象のラタン。懐かしい雰囲気にも、モダンな雰囲気にも似合う万能素材だ。素材の柔軟性を生かした、美しい造形・デザイン性の高いアイテムが多いのも魅力。今回はそんなラタン素材を取り入れるアイディアを紹介しよう。

昔ながらの家具からモダンなチェアまで幅広く活用されてきたラタン。その歴史は長く、日本では江戸時代ごろから生活道具を中心に使用されてきたという。家具として普及されたのは加工技術が向上した明治以降だが、古くから身近な素材として愛されてきた。

ラタンは熱帯で育つヤシ科の植物で、和名では籐（トウ）と呼ぶ。生命力が強く、軽いのにかなり丈夫だ。熱帯育ちの素材ということもありアジアンなイメージが強いが、北欧デザインなどにも頻繁に使用されるなど多様なスタイルと馴染みが良い。

木と違い繊維質なラタンはひび割れなどが生じにくいのも魅力。また内部には小さな穴が管状に通っていて、湿気のある場所では水分を吸収して、乾燥している場所では水分を放出してくれる調湿機能が備わっている。なのでカビなども発生しづらく長く愛用することができるのだ。

木に比べて加工がしやすいのも特徴。丈夫なうえ曲げ加工がしやすいので、家具のフレームとして使用されることが多い。

太めの丸芯を家具のフレームに使用したアイテムは木のものより柔らかな印象を演出できる。ラタン自体が軽量なので見た目がライトなのはもちろん、気軽に移動したりレイアウトが楽しめるのも魅力だ。フレームのほか、パーツの接合部分にもラタンを薄く割いたものが使われることが多い。

ラタンを割いてシート状に編んだものはチェアの座面によく使用される。編み方や太さなどで印象が変わるのでバリエーションが豊かだ。網目状で通気性が良いので蒸れることなく座り心地もしなやかでやわらかい。木のフレームとの組み合わせがカジュアルな北欧テイストを演出してくれる。

手編みのカゴやバスケットには細めの丸芯が使われる。より自在なフォルムを形づくることができるので、ペンダントライトのカバーなどにも使われる。網目から抜ける光や、壁や天井に反射する光の筋が空間をドラマチックに演出してくれる。

アレンジしやすく細かな装飾にも使われるので小物でも取り入れやすい。太陽のようなサンバーストデザインのミラーもラタンなら爽やかなアクセントに。大きめの家具以外のアイテムでも気軽にラタンを取り入れてみよう。

ちなみに、商品として採用されているラタンは水や油汚れ防止のコーティングが施されていることが多い。そのため日頃のお手入れは乾拭きで十分だが、汚れがひどい場合は薄めた中性洗剤を含ませた布で優しく拭き取ろう。網目の部分は小さなゴミや埃が溜まることがあるので、綿棒などで取り除いてメンテナンスを。

製造工程のほとんどが手作業なので、環境にも優しくハンドメイドな表情が楽しめるラタン素材。ひとつあるだけでも空間に柔和なアクセントを与えてくれるので、さまざまなテイストに合わせて楽しもう。

ざっくりと編まれたラグやカジュアルなクッションと合わせればより素朴な印象を高めてくれる。アジアンにも和モダンにも、北欧テイストにも似合うが、意外とインパクトがある素材なので全体のバランスを見ながらポイントで入れるのがおすすめだ。

涼しげな印象のラタンだが、実はウールやブランケットとの相性も良いので季節を問わず楽しめる。夏は爽やかに、冬はほっこりとした雰囲気を楽しんでみよう。

使ううちに経年変化して味わいが生まれるのも天然素材であるラタンの魅力。日の光や手の油分で黄色味が増したり飴色に変化していくので、表情の経過を楽しむのも醍醐味だ。

ちなみに、もともと染色が施されたラタン材アイテムもあるので、インテリアの雰囲気に合わせてチョイスするのも良い。もともとは明るく軽い質感の材だが、濃いめの色で染色されたものは重厚な印象にガラッと変わる。少しヴィンテージな雰囲気を出したい時にぴったりだ。

木ともスチールとも違う、その両方の魅力を持ち合わせたようなユニークな材料。ラタンならではのデザインや表情を毎日の暮らしにプラスして楽しもう。