お金について考えるとき、まずは知っておきたいこと – はじめてのお金の教室

お金について考えたほうが良さそうだけど、何から始めたらいいかわからない…。そんな漠然とした不安を抱えている人も多いのではないでしょうか。
豊かなライフスタイルを送るために、リズム株式会社のFPコンサルタント・山﨑博久を講師役に、お金にまつわる連載「はじめてのお金の教室」がスタート。
第1回は、「お金について考えるとき、まずは知っておきたいこと」をテーマに、定年までどれくらいお金が必要なのか、預貯金だけで将来は大丈夫なのか、明日からできるお金に関する習慣について話を聞く。

倍になるまで3600年!「預貯金だけあれば」が間違っているワケ

――資産運用と聞くと、どうしても難しいイメージがあります。銀行にお金を預けるだけではいけないのでしょうか?

銀行への預貯金は、最も基本的な資産運用です。しかし、昔と今とでは、だいぶ状況が変わっています。今の20代、30代の親世代が現役だった1970~80年代は、定期預金の利率が6〜9%でした。100万円を年利9%で預ければ、約8年で倍の200万円になる時代だったんです。
ところが、現在の年利は0.02%程度。72を年利で割ると、預けた金額が2倍になるまでの必要年数がわかるという式があるのですが、この式にあてはめてみると、100万円が200万円になるまで、約3600年もかかる計算になります。親世代と今では、預貯金のありがたみが全然違うんですね。

――もはや預貯金は「お金を置いておくだけ」なんですね。

置いておくだけなら、まだいいんです。同時に、物価の上昇についても考えなければなりません。がんばって1,000万円を貯めたとしても、物価が上昇すれば、貯め始めた当時に、1,000万円で買えた物が買えなくなってしまう。つまり、お金の価値が下がってしまうんです。

――放っておいても、利回りで増えないばかりか、価値がどんどん目減りしてしまう…ということですか。

今の親世代は預貯金で十分な運用ができたので、「銀行に預ける」以外のアドバイスが難しいのではないでしょうか。日本では、資産の約70%が預貯金に回されています。対してアメリカは、その半分以下の約30%。預貯金に重きを置かず、株や投資の運用をする文化が根付いているんです。
日本は、お金の教育を受ける場がなく、むしろ「お金について考えることは卑しい」というイメージがありますよね。お金も衣食住と同じレベルで、大切に考えてもらえればと思います。

年収3,000万円でも資産ゼロ!?「稼ぐ力」と「増やす力」は別

――将来が不安なのでとりあえず貯金をする、という人も多いと思います。実際のところ、手元にいくらあれば安心なのでしょうか?

「何歳までにいくら必要」という目標がないと、なんとなく不安な気持ちのまま過ごしてしまいますよね。まずは、自分がこれから向き合うお金について、目的別に大きく3つ「短期資産」「中期資産」「長期資産」に分けて、それぞれを具体的に数字でイメージしてみましょう。

最初に紹介する「短期資産」とは、病気や怪我などのトラブルで働けなくなったとき、しばらく生活するためのお金です。だいたい3〜6ヵ月分の生活費を確保しておきましょう。資産運用を始めるとしても、最低限この短期資産が貯まってからのスタートです。
まずは現状の把握から。通帳を見て、1ヵ月にどれくらいお金を使っているか、収支をチェックしてみてください。
短期資産との向き合い方は、別の回であらためて詳しくお伝えします。

――では、定年まではどれくらいのお金が必要になるのでしょうか。

結婚や住宅ローン、車購入、子供の養育費など、ライフイベントによって必要なお金は変わってきます。総務省が算出した平均値では、22~59歳までに必要となる生活費は、約2億円(夫婦2人、子供1人の世帯の場合)となっています。このライフイベント費用を「中期資産」と呼びます。一方、その間の平均手取り収入は約1億7,000万円。つまり、その差は約3,000万円です。
共働きであったり専門職であったりして、平均収入が上回っていれば、この差はもう少し縮めることができます。とはいえ、定年まで「支出が収入を上回る」ことは頭に入れておいたほうがいいでしょう。中期資産についても、別の回で詳しくお伝えします。

――そこまで差があると「足りない分はがんばって稼がないと…」と思ってしまいます。

ところが、収入が高い人は、支出も多くなる傾向があるんです。以前、2人ともお医者さんである30代のご夫婦に話を伺ったのですが、世帯年収が3,000万円を超えているにもかかわらず、資産がほぼゼロでした。これは、高い家賃や高級車の購入などがおもな原因です。高い収入を得ることによって、生活レベルが上がってしまうんですね。

お金を「稼ぐ力」と「増やす力」は、分けて考えるべきです。増やす力と聞くと、リスクの高い金融商品などで、短期的に儲けるイメージがあるかもしれませんが、私は長期的な視野での運用をおすすめします。20代、30代の若いうちから増やす力を持てば、長い時間をかけ、50代、60代になったときに大きな差がつくからです。

お金を意識すれば、世界が違って見えてくる

――短期資産の3〜6ヵ月分の生活費を貯めるために、明日からできることはあるでしょうか?

一番ストレスなく始められるのが、給料からの天引きです。
企業によっては「第二口座」を用意し、あらかじめ設定した額を自動的に天引きしてくれるしくみがあります。20万円の給料から10,000円貯金しようとすると、我慢が必要になるものですが、天引きにより最初から「19万円の給料」だと思っていれば、自然と月19万円の生活スタイルになります。意識せずにお金が貯まるので、おすすめですね。

支出面で注意したいのは、カードローンやキャッシングです。特に返済額の滞納は、信用情報を傷付けてしまうので注意が必要です。例えば、返済能力がないと見なされ、向こう2~3年は不動産購入でローンが組めないといった影響があります。
「カードローンを使ったことがない」という人も、携帯電話の端末代を月額の割賦払いにしていませんか?端末代の割賦もローンの一種ですので、こちらも滞納してしまうと信用情報に響きます。

――お金には「知らないと損する情報」と「知っていると得をする情報」が多いと感じます。こうした情報はどのように収集すればいいでしょうか?

実は、世の中にお金に関する情報はたくさんあるのですが、「見えていない」人が多いのです。FPがよく使う例え話に、「子供を生んだお母さんは世界が変わって見える」というものがあります。子供が生まれて初めて「周りにこんなに子供がいたんだ」とか「子育てはこんなことがたいへんなんだ」と見えてくる。お金についても同じことがいえます。お金に対する意識を変えれば、世界が違って見えてきます。

お金に関する書籍やセミナーはたくさんありますし、最近では社員向けの勉強会を行っている企業もあります。金融商品に興味があれば、専門家に相談することもできるでしょう。自分のお金をどのように守り、増やしていくか。まずは自分のお金を意識するところから始めてみてください。

リズム株式会社 FPコンサルタント 山﨑博久

宅地建物取引士、2級ファイナンシャル・プランニング技能士、保育士・幼稚園教諭一種・児童指導員。
大学卒業後、東京都の児童養護施設で、2~18歳までの男女児童とともに、指導員として生活を送る。その後、自分自身の可能性を広げるため、2012年に資産コンサルタントとしてリズム株式会社に転職。2014年、某金融機関主催のイベントにて、売上実績全国3位となり、表彰を受ける。
2018年8月現在、168名のお客様を担当する不動産コンサルタントとして活躍中。自身でも、マイホームと3戸の不動産を運用中。

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