個人年金の必要性とメリット・デメリットについて

老後の資産形成は、近年大きな注目を集めているトピック。20代、30代の中にも、老後のための資産形成を始めたという人は多くいるだろう。
老後資産を貯めるための選択肢は複数あるが、昔からある方法のひとつに個人年金がある。選択肢が増えた今、あえて個人年金を利用するメリットがあるのかどうか考えてみよう。

個人年金とは?

個人年金とは、民間の保険会社が販売している保険商品のひとつ。保険料を支払うことで、将来、年金形式でお金を受け取れるというものだ。
個人年金は、受け取り方と受取額によって、いくつかの種類に分けることができる。

受け取る年数による違い

厚生年金や基礎年金などの公的年金は、本人が生きている限り受け取ることができる。一方、個人年金の場合はそうとは限らない。それぞれの契約によって受け取れる年数が違うため、契約する際に確認しておく必要がある。

・確定年金
確定年金は、一定期間、必ず年金が受け取れる。本人が亡くなった場合でも、相続人が年金を引き続き受け取ることができるというのが特徴だ。
確定年金の受け取り年数は、5年、10年、15年といった選択肢の中から選ぶことになる。

・終身年金
終身年金は、公的年金と同様に、生きている限り年金を受け取ることができる。貯蓄や投資といった、ほかの老後資産形成方法と大きく異なるのがこの点だ。長生きするという、お金の面でいえばある意味「リスク」ともいえる点に備えるためには有効な手段だといえるだろう。
ただし、その分保険料が高いというデメリットがある。

・有期年金
有期年金は、一定期間、本人が生きている場合に限り、年金が受け取れる。確定年金との違いは、相続人が年金を受け取ることができるかどうかという点だ。

受け取り額による違い

個人年金は、最初から受け取る金額が決まっているタイプのものと、将来いくら受け取れるのかがわからないタイプのものがある。年金を選択するときは、受け取る期間と受け取り額のいずれもどうするかを決める必要がある。

・金額が確定している年金
一般的な個人年金の多くは、受け取れる金額が確定している。契約時点で、将来いつからいつまで、いくら受け取れるのかがはっきりしているため、掛金に対するメリットがどの程度あるのかを事前に知ることが可能だ。
ただし、終身年金と有期年金については、いつまで生きるかによってメリットの度合いが変わる。

・変額年金
保険会社が掛金で運用を行い、運用益が大きければそれだけ将来受け取れる年金額も高くなるというのが変額年金だ。ただし、運用がうまくいかない場合、元本割れするリスクもはらんでいる
変額年金の中には、日本円ではなく外貨で運用を行うものもある。外貨建て年金は、運用益にプラスして為替レートによる利益も受け取れる可能性があるため、大きなリターンを期待できる。一方、為替手数料がかかるほか、円高になると大きな損失につながる。

個人年金のメリット

個人年金を利用するメリットを見てみよう。

半強制的に貯められる

個人年金の掛金は、定期的に引き落とし等の手段によって納めることになる。
さらに、貯金とは異なり、簡単に引き出すこともできない。そのため、「現金を持っているとついつい使ってしまう」という人でも、最初からなかったものとして老後の資産形成を行えるというメリットがある。

税金の控除が受けられる

個人年金の掛金は、2011年までに契約したものであれば年間10万円、2012年以降に契約したものであれば年間8万円まで所得控除の対象とすることができる。
ただし、控除額は全額ではなく、一定の計算式にあてはめて求められる。

控除額の上限は、2011年までに契約したものの場合は5万円、2012年以降に契約したものは4万円だ。
ただし、控除を受けるためには年末調整や確定申告で保険料控除のための証明書を添付して、申告をする必要がある。

元本以上の金額を受け取れる場合が多い

一般的な個人年金では、掛金以上の金額を受け取れる場合が多い。これを示した数字が返戻率だ。返戻率が高い年金保険を選べば、それだけ支払った保険料よりも多くの年金を受け取れることになる。
ただし、返戻率が高くない代わりに、死亡保険金がついた商品なども存在している。また、変額年金保険のように、受け取る年金額が元本を下回る可能性がある保険もある。

個人年金のデメリット

個人年金のデメリットには次の2点が挙げられる。

資金を自由に利用できない

年金保険の掛金として支払った金額は、基本的に満期になるまで利用することができない。不意に現金が必要になった場合も、預貯金のように引き出すことができないため、解約返戻金を担保に保険会社からお金を借りる「契約者貸付」などを利用することになる。
契約者貸付はカードローンに比べて金利が低いというメリットがあるが、無利子ではない。

まとまった金額が必要で、返済ができない見込みが高い場合は、解約して解約返戻金をそのまま受け取ることもできるが、この場合は元本割れしてしまうことが多い。もちろん、将来年金を受け取ることもできないため、「割り込んだ金額分、損をしただけ」という、非常に残念な結果に終わる。
ただし、確定拠出年金のように原則解約不可(脱退のための要件が非常に厳しい)というわけではない。

インフレに弱い

年金保険とは、将来一定の金額が受け取れることを約束されたものだが、この「一定の金額」が将来も今と同等の価値を持っているとは限らない。
たとえ受け取れる総額が払込額を上回ったとしても、将来の貨幣価値が変わってしまった場合、「こんな金額をもらっても何もできない」ということにもなりかねない。

ただし、このような問題は、預貯金などでも起こりうる。積極的な運用をしない資産については、インフレリスクについても意識しておく必要があるだろう。
なお、変額年金を利用することで、このデメリットをカバーすることもできる。

個人年金以外の老後資産形成方法

老後の資産形成方法は、個人年金以外にも複数存在している。最後に、会社員とフリーランスについて、利用できる老後資産形成方法を紹介しよう。

会社員の場合

会社員独自の老後資産形成方法には、企業型確定拠出年金、年金財形、企業年金、退職金などがある。ただし、どの方法もそれを導入している企業に勤めている社員しか利用することができない。
まずは、自社にどのような制度が用意されているのかを、人事・総務に確認してみよう。

そのほか、誰でも利用できる方法として、NISA・つみたてNISAが挙げられる。確定拠出年金については、企業型のほか、個人型のiDeCoを利用することもできる。

フリーランスの場合

フリーランス独自の老後資産形成方法には、小規模企業共済、国民年金基金、付加年金がある。なお、国民年金基金には付加年金が内包される形になっているため、両者を併用することはできない。
この2つは、国民年金に加入している第1号被保険者だけが利用できる制度だ。
また、フリーランスの人も、iDeCoやNISA・つみたてNISAを利用することができる

個人年金は老後資産形成方法のひとつ

比較的ローリスク・ローリターンで、節税効果がある個人年金は、老後資産形成方法のひとつとして利用しても損はないだろう。ただし、大きく資産を増やすには不向きであり、節税効果も一定額までに限られ、全額が控除されるわけではない。
インフレに弱い、資金を自由に利用できないといった問題点も踏まえた上で、利用を検討することが大切だ。

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