引越し後の住民税、手続きはどうする?支払い方や届出先を徹底解説

住んでいる地域の自治体に支払う住民税。引越しをする場合、いつ、どのような手続きが必要なのだろうか。
会社員の引越し後の住民税の支払い方や、届出先について解説する。

給与から天引きされる住民税とは?

まずは、住民税の概要と、会社員が住民税をどのように支払っているのかについて見ていこう。

住民税の概要

住民税とは、1月1日時点で居住している自治体に対して支払う地方税のこと。一般的に、「道府県民税(都民税を含む)」と「市町村民税(特別区民税を含む)」の2つを合わせたものを指す。

住民税は、前年の課税所得額に応じて決まり、ほとんどの自治体では道府県民税が4%、市町村民税が6%に定められている。これに、所得額にかかわらず課せられる均等割額を足した金額が、住民税の税額だ。
なお、均等割額は、多くの自治体で道府県民税1,500円、市町村民税3,500円の計5,000円となっている。

住民税の納付方法

会社員は、基本的に住民税を自分で納付する必要がない。会社が給与から天引きし、代わりに納めることになっているからだ。住民税の決定から納付までのおおまかな流れは、次のとおりとなる。

<住民税の決定から納付までの流れ>
1. 会社が毎年1月31日までに、各自治体に社員の給与支払い報告書(源泉徴収票とほぼ同内容)を提出
2. 自治体が給与支払い報告書をもとに住民税を計算し、会社に通知
3. 会社が自治体からの通知にもとづいて、当年6月から翌年5月にかけての12ヵ月間、月割りされた住民税を給与から天引き
4. 会社が、天引きした住民税を各自治体に納付

当年6月から翌年5月まで毎月支払う住民税は、総額を月割りした金額となっている。そのため、月々の給与が変動したとしても、住民税の金額は1年間同一となる(6月のみ、端数調整のため金額が異なる場合がある)。

サラリーマンでも節税できる!税金対策6つの方法

引越しをしたら役所で住民税の手続きは必要?

住民税は、1月1日時点に住所があるところで課税される。たとえ年の途中で引越しをしたとしても、住民税に関する手続きは不要であり、納付先が変わることもない。

<年の途中で引越しを行う例>
2020年9月30日まで 東京都港区に居住
2020年10月1日から 神奈川県横浜市に転居

この場合、2020年1月1日時点では東京都港区に住んでいるため、2020年6月から2021年5月までは東京都港区に住民税を納めることになる。
翌年の2021年1月1日時点の住所は神奈川県横浜市のため、2021年6月から2022年5月までは、神奈川県横浜市が住民税の納付先だ。

引越しをしたら会社への申請は必要?

引越しをした際には、必ず会社への連絡と社内規定にもとづく手続きが必要になる。これは、社員名簿を作るためや、保険料の住所を変更するためなど、さまざまな理由によるものだ。

会社は、社員の住民税の申告や納付を代行しているため、現住所を把握しておかなければならない。引越しをした翌年の1月1日時点で、引越しの事実を会社が知らなかった場合、住民税を正しく納めることができなくなってしまう。引越しをしたら、すみやかに会社に届け出よう。

なお、会社員の場合、翌年から納付先が変わる場合でも、基本的に自分で手続きをする必要はない。念のため、会社からもらえる住民税の通知書を確認しておこう。

引越しに伴う住民税のよくある疑問

会社員の場合、基本的に住民税の手続きや納付は会社が代行してくれるため、自分で何か行動する必要はない。とはいえ、引越しにあたって「こういうトラブルはないか?」「こういう場合はどうなる?」と心配になることもあるだろう。ここからは、引越しに伴う住民税のよくある疑問を見ていこう。

住民税を二重請求されてしまうことはある?

引越し前の自治体と、引越し後の自治体の住民税が二重で請求されてしまうことは、制度上ありえない。仮に、引越し後に住民税が高くなったとしても、それは前年の所得がその前の年より多くなったか、家族構成等が変わり控除が減ったといった理由で、税金が二重に徴収されているからではない。

また、これまで給与から住民税が天引きされていた人のところに、会社を通さずに「住民税を支払え」といった通知書や納付書が届くこともない。万一、このようなことがあった場合は、会社に納付状況を確認してもらおう。

住民税の金額は引越し先によって違う?

住民税の税率は、ほとんどの自治体で、道府県民税と市町村民税合わせて所得の10%が基本。また、均等割も5,000円の自治体が多い。

ただし、すべての自治体がこれに則っているわけではない。例えば、神奈川県横浜市の2019年度の住民税率は、県民税が2.025%、市民税が8%の計10.025%で、均等割は県民税1,800円、市民税4,400円の計6,200円。環境保護等の財源確保のために上乗せされ、一般的な自治体よりも住民税が高くなっている。

引越しと同時に転職した場合は?

引越しと同時に転職をした場合、転職時期によって次のいずれかの対応をとることになる。

<引越しと同時に転職をした場合の対応>
(1)転職先の会社で給与天引きを継続。
(2)転職前の会社の最後の給与から5月分までの残りの住民税を全額納付。6月分からは、転職先の会社で給与天引き。
(3)残りの住民税に関する納付書が自宅に届き、自分で納付(転職先給与からの天引きはなし)。翌年分からは、転職先の会社で給与天引き。

いずれにせよ、手続きは会社を通して行う。ただし(1)の場合は、転職前の会社に作成してもらった異動届を転職先の会社に渡し、手続きを進めてもらう必要がある。
また、(3)の場合は、自治体から届く納付書を使って、自分で住民税を納付することになる。書類の提出忘れや納付忘れがないように気をつけよう。

1月1日に引越しをした場合は?

1月1日前後に引越しをし、役所に転出届を提出する際、転出日の欄に1月1日以降の日付を記載した場合は、引越し先の自治体が、6月以降の住民税の納付先となる(5月までは引越し前の自治体、6月からは引越し後の自治体に住民税を納付する形になる)。なお、転出届は、引越し当日の前後14日以内であれば提出することが可能だ。

引越し時に住民税の特別な手続きは必要ない

会社員の場合、会社を通して住民税の手続きが行われるため、自身でしなければならないことはない。また、引越しをするからといって、住民税に関して特別な手続きが必要だったり、手続き漏れによって二重課税されたりといったこともない。
ただし、転職のために引越しをした場合などは、住民税を一時的に自分で納付しなければならない可能性もあるため注意しよう。