資産形成はなぜ必要?20代・30代から始めたい将来への備え

資産形成とは、コツコツ資金を積み上げていくことで資産を作ることだ。
資産運用と混同されがちだが、資産運用は「今ある資産を活用してさらなる利益を目指す」ことで、0から資産を作り上げていく資産形成とは意味が異なる。まずは、資産形成から始めてみよう。

資産形成の目的

目的がなければ、資産形成のモチベーションも上がらない。まずは、20~30代に想定される資産形成の目的について見てみよう。

いざというときのため

病気や家電の買い替え、冠婚葬祭といったイレギュラーな大型支出に備えるためには、まとまったお金が必要だ。資産形成は、あるとき突然訪れる資金需要に、落ち着いて対処するために役立つものだといえるだろう。

マイホーム資金

将来、マイホームを購入しようと思っている人は、計画的に購入資金を貯めておく必要がある。マイホームは、一度に支出する金額としては、人生で最も高額な物になる可能性が高い。できるだけローン返済の負担を減らすためにも、貯金は必須だといえるだろう。

結婚・教育資金のため

結婚に際しては、結婚式や新婚旅行、新居を構えるための費用など、多くのお金がかかる。また、結婚して子供が生まれると、教育資金が必要になる。幼児教育・保育の無償化や高等学校無償化など、子育て支援も利用できるが、それだけで教育費をカバーすることは到底できない。

老後のため

現在20~30代の人の中には「年金はあてにできない」と考えている人も多いだろう。実際のところ、年金の支給額が完全に0になるとは考えにくいが、支給額が減ったり、支給開始年齢が遅くなったりする可能性は十分ある。資産形成をして老後資金を確保しておくことが、老後の安定した暮らしにつながる。

こうして見ていくと、すべての人に共通するのが「いざというとき」と「老後」であり、ライフプランに応じて必要になるのが「マイホーム」と「結婚・教育資金」といえるだろう。
「自分は結婚する気もないし、気ままに生きる」と思っている人であっても、いざというときや老後のための資産形成はしておく必要がある。

20~30代で老後のことまで考える必要はある?

老後のための資産形成は誰にとっても必要であるが、20~30代の人にとって、老後はまだまだ先のことのように思えるだろう。
「今から老後の心配をしてお金を貯め始める必要があるのか?」と疑問に思う人もいるかもしれない。もちろん、若いうちにしかできない経験のためにお金を使い、将来に役立てることも大切だ。しかし、老後や資産形成を一切考えず、収入を使いきってしまわずに、少額からでも資産形成を始めたほうがいいだろう。

20~30代で資産形成を始めるべき理由

現在30歳の人は、65歳まで35年間ある。ところが、人生100年時代ということを考えると、65歳から100歳までも同じ35年だ。つまり、65歳以降、仮に年金額が毎月3万円不足するのであれば、今から毎月3万円貯金しないと足りなくなることになる。

とはいえ、30代後半から50代にかけては、ライフプランによっては住宅ローンの返済や子供の教育などが発生する。老後資金という意味では、思ったように貯められない可能性が高いだろう。また、いざというときの支出などによって、貯金が目減りすることもある。そこで、投資や利率のいい貯金などを活用した資産形成を行う必要があるのだ。

20~30代で資産形成を始めるメリット

資産形成は、長期的な視点で資産を築いていくものであるため、早く始めるほど効果が高くなる。だからこそ、20~30代という若いうちから資産形成を始めたほうがいい。

金融庁の「資産運用シミュレーション」で計算してみると、毎月3万円を30年間、3%の利率で運用した場合、最終的な金額は1,748万2,107円になる。それでは、積立額を10倍にして、積立期間を10分の1にしたらどうだろうか。
30万円を3年間、3%の利率で運用すると、最終的な金額は1,128万6,168円だ。

積み立てた金額はどちらも1,080万円だが、最終的な金額は600万円以上変わる。これが、早いうちから資産形成を始めることで得られるメリットなのだ。

20~30代におすすめの資産形成方法

最後に、20~30代におすすめの資産形成方法をまとめた。自分に合った方法で資産を形成していこう。

投資と預金をミックスする

資産形成は、投資と預金の両方を並行して行おう。
投資は、現金化するタイミングを見計らわないと損をする可能性がある。一方で、2021年現在、預金は非常に利率が低く、長期間預けていても大きな増加が見込めない。投資と預金をミックスして行うことで、両者のデメリットを補い合えるだろう。
なお、投資にはリスクもあるため、抵抗がある人もいるかもしれない。しかし、若いうちからスタートすれば、一時的に含み損が出ても取り戻しやすい。適度にチャレンジすることをおすすめする。

税制優遇制度を活用

長期的な資産形成には、税制優遇制度の活用が役立つ。特に「iDeCo」と「つみたてNISA」は、20~30代の資産形成に適しているといえるだろう。
拠出金がすべて非課税になるiDeCoは、老後資金づくりに特化した資産形成方法だ。拠出金の全額が所得控除の対象になり、なおかつ原則60歳まで引き出せないため、お金があると使ってしまう人でも安心だ。ただし、資金が必要になっても解約ができないため、iDeCo以外の資産形成方法と併用する必要がある。

一方のつみたてNISAは、毎年40万円まで、最長20年間、投資益が非課税になる制度だ。つみたてNISAでできる少額の積立投資は、20~30代が始める長期的な資産形成に適している。

給与天引きで貯める

給与天引きで貯められる「財形貯蓄」は、あらかじめ給与から一定の額を差し引いて貯蓄できる制度だ。利率はそれほど良くないが、手取り給与から貯蓄しようとしても、なかなか貯められない人は活用しよう。
引き出しも一般的な預金よりも面倒なので、「ついコンビニのATMでお金を下ろしてしまう」という場合の抑止力としても役立つ。

ただし、財形貯蓄は会社に制度がないと利用できない。銀行や信用金庫でも、指定日に一定の金額を自動で定期預金等に振り替えてくれるサービスを行っているため、財形貯蓄が使えない人は、こうした積立定期預金制度を活用しよう。

定期的に資産の棚卸をする

資産形成を始めたら、定期的に資産の棚卸をしよう。定期預金や投資、財形貯蓄など、いろいろなところでお金を貯めていると、総資産がわかりにくくなる。半年ごとや1年ごとなど、定期的に今自分が持っているお金をすべて書き出して、合計してみてほしい。それをグラフや表に記録していけば、資産の推移が一目でわかる。
これは、自分の資産を正確に把握する上でも役立つが、何よりも資産形成のモチベーションにつながるだろう。
また、最近では資産管理が簡単にできるスマートフォンのアプリも多く登場している。自分に合ったものを選んで使うといいだろう。

将来に備えて、今から資産形成を始めよう

効率良く資産形成を行うためには、若いうちから始めて長期間継続することが大切だ。「貯金しないと」と漠然と思っているだけではお金は貯まらない。先延ばしにせず、思い立ったタイミングで資産形成のためのアクションをとる必要がある。
まずは、今自分がいくら持っているのか、「資産推移表」を作って銀行口座の預金残高や手持ち資金を計算してみよう。そこから資産を増やしていくのも、横ばいにするのも、自分次第だ。