私が大好きなロンドンのカフェ

宮田華子 
ロンドン在住ライター。メディア製作会社に勤務後、2011年からフリーランスのライターに。デザイン、アート、建築、クラフト等を得意とし、文化&社会問題について日本の媒体に執筆。編集ユニット「matka」として、ウェブマガジンも運営している。2015年にロンドンで小さなフラット(マンション)を購入。日本とは異なる一筋縄でいかない「イギリス・家事情」に翻弄される日々を送っている。 
ウェブ:http://matka-cr.com/ 
インスタグラム:https://www.instagram.com/hanako_london_matka/

暖冬から少しずつ春に向かっているロンドンです。皆さま、こんにちは。

イギリスの春を告げる花は黄色い水仙です。この花がスーパーマーケットで売られるようになると、毎年「もうそんな季節!?」と思います。「まだまだ寒いのに、もう水仙売ってる!」と、毎年繰り返し同じことを思っているのですが、今年は冬らしからぬ冬だったので例年ほどの驚きがないのは少し寂しい気もします。

こんな風につぼみの状態で、束になって売っています。1~2日でわーっと開花します。

さて今回は、私が大好きなロンドンのカフェについてです。

犬も歩けばカフェにあたる!? ロンドンはカフェの街

ここ数年、日本に一時帰国するたびに日本の「カフェ・パラダイス」ぶりを満喫していますが(ドトールの「氷ザクザク」アイスカフェラテを愛しています♡)、ロンドンにも本当にたくさんのカフェがあります。どんどん新しい店が誕生し増える一方ですが、良い感じのお店はどこも混んでいるので、ロンドンはまだカフェ飽和状態ではないようです。

私がロンドンに来た10数年前は「スターバックス」や、イタリアンコーヒーを出すイギリス系のカフェチェーン「Cafe Nero」「Pret A Manger」等がすごい勢いで広まりつつある時期でした。ロンドンに遊びに来た日本の友人たちがあまりのカフェ(しかもコーヒー系)の多さに驚き「イギリスって紅茶の国なんじゃないの!?」とよく聞かれましたが、「紅茶ももちろんよく飲むけれど、コーヒーも流行っているの」「家や会社では手軽に自分で淹れる紅茶を飲んでいるけど、外ではお高めのコーヒーを飲むっていう人が多いかな」と答えていたのを思い出します。

しかしそれから時が過ぎ、チェーン系だけでなく素敵な内装&スペシャリティコーヒーを提供する独立系のカフェもたくさん誕生しました。サードウェーブ系のコーヒーも浸透し、家庭用エスプレッシマシーンや「ネスプレッソ」を代表とするカプセル式のコーヒーマシーンを持っている人も増えました。つまり「家では紅茶、外ではコーヒー」ではなく、家でもどこでも美味しいコーヒーを飲むようになったのです。

ではイギリスではみんなコーヒーばかり飲んでいるか?というとそれも違います。もちろん紅茶も大好きです。優雅なアフタヌーンティーを楽しめる豪奢なティールームは昔からたくさんありましたが、ここ数年はいまどき感のある紅茶専門のカフェも増えました。コーヒーも紅茶もどちらも美味しいお店もたくさんあり、ロンドンはカフェ百花繚乱時代を迎えています。

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大好きな紅茶カフェ「Good Proper Tea」。

私はコーヒーも紅茶も大好きで、1日中カフェインを飲んでいたいヒト。どこに行ってもカフェを探しているので好きなカフェはたくさんありすぎますが、今回はお気に入りの中からインテリアも雰囲気も全く異なる2つのカフェをご紹介します。

ヴィクトリア時代の雰囲気が楽しめるミュージアム・カフェ

ロンドンにはミュージアムがたくさんありますが、カフェが必ず併設されています。日本から友人が来ると必ずおすすめしているのが、ヴィクトリア&アルバート美術館のカフェです。

ロンドン中心部のやや西、サウス・ケンジントン駅近くにあるヴィクトリア&アルバート美術館は服飾デザイン系に強いミュージアムとして知られています。中にカフェは3個所あるので分かりづらいのですが、「ガーデン・ルームズ」は、1868年にオープンした当時の内装を残す3つの部屋(ギャンブル・ルーム、ポインター・ルーム、モリス・ルーム)でお茶が楽しめます。

ギャンブル・ルーム。新古典主義(ネオ・クラシック)の円柱と美しいステンドグラスにモダン照明を組み合わせたインテリア。この部屋をデザインしたゴッドフリー・サイクスが1866年に死去した後、ジェームス・ギャンブルに後を託したことから「ギャンブル・ルーム」と名づけられました。

ポインター・ルーム。画家エドワード・J・ポインターがデザインした部屋です。オランダ風の青いタイルを使っているのが特徴です。

モリス・ルーム。アーツ&クラフツ運動やモダンデザインの父として有名なウィリアム・モリスがデザインしました。彼がデザインを委託された当時、まだ31歳だったそうです。

壁紙ではなく、こんな風に壁に模様が刻まれています。

夜撮影したので、暗い写真でごめんなさい。この日は金曜日でしたが、金曜は22時まで開館しているので夜でもゆっくりお茶ができます。現在開催中の「クリスチャン・ディオール展」を見に来た人と、この日開催されていたイベントの来場者で館内もカフェもいっぱいでした。

食べ物や飲み物を先に選んで購入し、自分でテーブルに運ぶシステムです。お茶だけなく、温かい食事もできます。

広々としているうえにネットも使えるので、パソコンを開いて仕事をしていたり、打ち合わせに利用している人もたくさんいます。展覧会の前後に立ち寄る人だけでなく、カフェだけのためにこのミュージアムに来て、ちょっと仕事…という人も多そうです。個人的には仕事帰りに1人で「ほっと一息」つく場所としても使えるので重宝しています。

どのミュージアムもフリーwifiを提供しているので、仕事も打ち合わせできます。椅子はフリッツ・ハンセンのものを使用。

コーヒー、紅茶以外にもスイーツから温かい食事までいろいろ揃っています。でも正直、味は「まあ、普通(笑)」です。コーヒーも紅茶もケーキも悪くはないですが、味だけであれば取り立ててここで食べなくてもいいレベルではあります。でも荘厳な歴史的遺産の中でお茶が飲めるという「スペースとしての素晴らしさ」が最大の魅力なので、皆さん味についてはあまり気にしていない気がします。

住宅街のおしゃれな憩いの場

もう1店は「近所にあったら嬉しい!」タイプのカフェです。ロンドン南部、Tooting Broadway駅から歩いて7分のところにある「Milk Teeth」です。スタイリッシュなのに落ち着ける、現在私のかな~り大切な「憩いの場」です。

様々なお店が立ち並ぶ駅前通りの先にあります。正面は大きなガラス窓と木枠で「スッキリ感」を出しています。

店内は元の内装の少し寂れた感じを生かしつつ、改装したもの。柔らかな黄色の指し色とシンプルな内装でまとめられています。装飾らしい装飾は特になく、壁に取り付けられた小さなオブジェと、ほんの少しのドライフラワーのみです。

壁を生かしていろいろやれそうなところをあえて「やらない」ところがいいのだな…と思います。

両側のレンガの凹凸、天井が剥げたところはわざとそのままに。アンティーク風(ベネチアングラス風とも言えますね)のガラスのランプシェードが下がっています。

ランプシェードも黄色で統一感があります。

テーブルと椅子は使い方を間違えばダサさ満点にもなりかねない籐&パイプ製なのですが、タイルの色と合わせてうまく「ややレトロ」に見せているのは高度なテクです。

土曜日の午後に行ったのですが、本当にたくさんの人が入れ代わり立ち代わり来店していました。人気店です。

内装の能書きが長くなりましたが、このお店の人気の秘密は「心地よいスペースであること」だけではありません。コーヒーの美味しさ、そして他にはない食事の美味しさです。素材にこだわりまくったアイデアたっぷりのスイーツや食事が食べられます。

コーヒーの種類によって使う豆を変えています。今回は店主おススメのものを注文しました。ルワンダ産の豆を使ったフィルターコーヒー。かなりたっぷりの量(2.50ポンド)だったのですが、独特の香りが気に入りこの日は2杯飲みました。

この日のスペシャル・メニューだったワッフル。ふんわり焼けたワッフルにはうっすら甘みをつけてホイップしたクロテットクリームがのっています。マヌカハニーとイエローグレープ・トマトの甘煮を添えて。飾られたベッコウ飴も自家製で、中にハーブが入っています。見た目だけでなく、味も素晴らしいです。

このお店はBalham駅(Tooting Broadwayのやや北)近くにある「Milk」というお店の姉妹店。どちらのお店も内装工事からメニュー作りまで、店主のジュリアン・ポーターさんとローレン・ジョンズさんが手掛けています。

店主のジュリアンさん(中央)と、この日フロア担当だった2人のスタッフ。3人共本当にテキパキ働いていました。

お客さんは近所の住人が多いので常連さん率が高く、スタッフもお客さんと顔見知りになっている様子。お客さんに声を掛けながら、楽しそうに働いているもの良い雰囲気に貢献しています。ここに来ると本当に寛いだ気分になり何時間でもいたくなります。

週末の午前中~14時ぐらいまではずっと混んでいますが、15時を過ぎると時折静かな時間が訪れることも(でもこの後またすぐ混んでしまいました)。

今回紹介したのはインテリアも雰囲気も全く異なるカフェですが、どちらも「ロンドンらしい」カフェとも言えます。ロンドンには無機質なたたずまい(元倉庫であったり、元工場を改装したイメージ)のカフェもたくさんあり、私はこちらも大好きなのですが、「Milk Teeth」のように手作り感がある内装は「我が家インテリア」の参考にもなるので、そんな意味でも楽しいなあと思っています。

外食産業のインテリアは、その時人々が「素敵」と思うものを映し出しているので、様々なアイデアをもらえる場でもあります。紹介したいカフェ、レストラン、パブは本当にたくさんあるので、順次ここに書いていきたいです。

今回紹介したカフェ:

○V & A Cafe (The Garden rooms)
Victoria and Albert Museum
Cromwell Road
London SW7 2RL
営業時間:
土~木: 10.00 – 17.45
金: 10.00 – 22.00
https://www.vam.ac.uk/info/va-cafe/

○Milk Teeth
110 Mitcham Road
Tooting Broadway
London SW17 9NG
営業時間:
月~金:8:00 – 16:00
土日:8:00 – 17:00
https://www.instagram.com/milkteethcoffee/