人が集まる季節目前:テーブルウェアを衝動買い!

宮田華子 
ロンドン在住ライター。メディア製作会社に勤務後、2011年からフリーランスのライターに。デザイン、アート、建築、クラフト等を得意とし、文化&社会問題について日本の媒体に執筆。編集ユニット「matka」として、ウェブマガジンも運営している。2015年にロンドンで小さなフラット(マンション)を購入。日本とは異なる一筋縄でいかない「イギリス・家事情」に翻弄される日々を送っている。 
ウェブ:http://matka-cr.com/ 
インスタグラム:https://www.instagram.com/hanako_london_matka/

10月半ばから冷え込む日が多くなり、もう暖房なしではいられない寒さになっているロンドンです。

ハロウィンも終わり、世の中はいよいよクリスマスに向かっています。

クリスマス店

最近はハロウィンと並行でクリスマスグッズの発売を始めるお店も多くなりました。コチラのロンドンの老舗デパート「リバティ」は8月からクリスマス専門フロアを設ける力の入れようです。

毎年“季節限定”で悩むこと

毎年のことなのですが、年末年始が視野に入ってくる頃になると思うことがあります。

それは「我が家には食器が少ない…よね」ということ。

夫婦2人で食事をするには十分な量は持っています。1年の内9カ月ぐらいは「こんなに食器なくてもいいのかも~」「もう少し“少数精鋭”にして収納をコンパクトにしたい」と言っているぐらいなのです。

しかし残り3カ月は真逆のことを考え、悩み始めます。

問題は「お客様がきてくれたとき」。

クリスマスやお正月等、友人を家に招きたいと思う時期になると、「ディナープレート(主菜用の大皿)が人数分ない!?」とか「ローストしたお肉が全部のるプラッター(盛り付け用大皿)がない」「ウチってスープ用のボウルがゼロだった?」「ケーキ皿が足りない」等々の問題が続々と勃発するのです。

大人数を呼ぶわけではないのです。せいぜい2~3人、多くて4人です。でも4人呼べば、6人分の食器が必要になります。でも我が家にはディナープレートが6枚ありません。

日本人2人家族の我が家は、やや洋風要素の入った“なんちゃって和食”のようなものを食べているのでとりわけ用の小・中皿は結構あるのです。でもヨーロッパ&イギリス的料理を作って人を呼ぶ場合、洋皿系のプレート&プラッターが圧倒的に不足します。

汁ものは少なめのときはお味噌汁用のお椀、たっぷり盛りたいときは、大昔にガラクタ屋で買ったこのカフェオレボウルで済ませています。でも時折「2個しか持っていない」問題が勃発します。

我が家のことを、私はよく「人が集まらない家(爆)」と冗談もこめて言っているのですが、そんな我が家でも秋が深まると毎年頭をもたげるこの洋食用食器問題。物を増やしたくはないれど、人を呼びづらいのはもっとストレス。楽しく暮らしていくにはある程度「揃っている」ことも大切なようです。

やっと観念し、食器を少し増やそうかと思い始めました。

友人宅

「食器を増やそう」思ったのは、素敵すぎるお家に住んでいる知人Yさんの影響も大きいのです。こちらの写真はYさんの家でタイカレーをご馳走になったときのもの。バーレイ社の「ブルー・アジアティック・フェザンツ」に盛り付け。いつも素敵な食器とアイロンがビシッとかかったテーブルクロスでもてなしてくれます。30人ぐらいのパーティーのときも、紙皿等は一切使わず、新旧様々なテーブルウェアを出してくれました。

そんなとき、食器好きの友人、Mさんが日本から遊びにくることになりました。「イギリスの陶磁器の街、ストーク・オン・トレントに一緒に行かない?」というお誘いに加え、嬉しいことに本コラム今年1月の記事「大モノ家具はアンティークマーケットで」を読んでくれて、(記事に書いてあった)「サンバリー・アンティークマーケットに行きたい!」と言うのです。

「洋食器が足りない問題」を解決したい私にとって、これは良い機会!

「Mさん滞在中に、良い食器との出会いがあればな~!」

そんな風に期待しつつ、ワクワクしながら彼女の来英を待っていました。

しかし…(私にしては)意外な結末が待っていたのです…!

イギリスの焼き物の里「ストーク・オン・トレント」

10月初旬、雨の降る寒い日にMさんと私、そして旦那のヒトの3人で「ストーク・オン・トレント」に向かいました。ロンドン中心部から電車で約2時間、イングランド中央部にある町です。陶芸に適した粘土質の土が取れることから高品質の陶器産業が発展し、現在もこの地に多くの陶磁器ブランドが工場を持っています。

駅前

駅前には、ウェッジウッドの創始者、ジョサイア・ウェッジウッドの彫像が。

日帰り旅なので訪ねるブランドは「バーレイ(Burleigh)」と「スポード(Spode)」の2つに絞りました。

充実のファクトリーショップ「バーレイ」

まずは駅からタクシーに10分程乗り「バーレイ」へ。

バーレイのファクトリー。ミュージアム、ギャラリー、カフェ、ファクトリーショップも敷地内にあります。

誰もいない

あいにく当日は雨。ファクトリーの見学がお休みの日だったせいなのか人影まばら。まるで貸し切り状態。レンガの渋い色が素敵です。

入口を入ると、すぐそこにファクトリーショップが!

お~~~! 雨に濡れて寒かったけど、気持ちが一気にアガる!!!

ショップ入口

俄然コーフンしてきたのですが、気持ちを抑え、まずは冷え切った体を温めるため、カフェに。

カフェ

イギリスの伝統のパターン「ブルー・ウィロー(青い柳)」が壁に描かれています。

クリームティ

紅茶とスコーンのセット「クリームティー」を注文。温まりました。ティーカップはバーレイの人気のパターン「ブルーカリコ」、ティーポット&ミルクジャグは小花模様の「ブルーフェリシティ」。

ライト

ポッド型のライト。「陶磁器工場に来た」感が高まりますね(笑)。

一息ついた後、敷地内を散策しました。週末だったので工場見学はできなかったのですが、敷地内の雰囲気は素敵でした。

運河

出来上がった陶磁器は、かつては運河を使って輸送されていました。その跡が今も残っており、荷揚げするクレーンもディスプレーされています。向こう岸の塀は、バーレイらしい青い花模様が描かれていました。

モールド

型(モールド)を収納している倉庫。ずっと見ていたい佇まい。

さていよいよファクトリーショップへ。

1階はアウトレット、2階は正規価格の品が展示&販売されています。

ショップ1階

1階は値段も正規価格よりずっとお安めですが、セットで揃っていない場合もあります。

ショップ2階

2階は正規品のショールーム。新作ラインナップをセット買いできるようになっています。

一通り見て、すぐに気に入ったお皿見つかりました。シンプルなデザインが好きなこともあり、薄いグレーの「アジアティック・フェザンツ」のプラッターです。このぐらいのさりげなさだったら、見た目も甘すぎず、どんなお料理にも合いそうです。

黒四角皿

薄すぎるぐらいのグレーが気に入りました。

チキンやビーフなどのローストを作った時に「一度の全部盛り付けられるプラッターがない」問題を解決すべく、まずこの皿の購入を決意。そして同じ柄のディナープレートもアウトレット価格でとても安くなっていたので買おうかと思ったのですが、ここで迷いが。

「全部同じ色でいいのかな…?」

これまで友人宅やお店で薄いピンクや水色のアジアティック・フェザンツをさんざん使ってきて、「素敵だな」「いつかほしいな」と思ってきました。でも目の前で見ると、圧倒的にグレーが好み。とはいえ、ここで同じ色だけ買うと、後で「もっと冒険した方がよかったなって思わないのかな?」と思ってしまったのです。

考えた末、安さにほだされ冒険することに。グレー、水色、ピンクの3色を2枚ずつ買ってみました。

3色

こちらが購入した3色。

「もし使って気に入らなくても、バーレイのお皿だったらきっともらってくれる人もいるでしょう。無駄にはならないはず」

他にもミルクや水用のジャグなども欲しかったのですが、私にしては一気にお皿7枚購入は「異例」ともいえること。ここはグッと我慢してお会計しました。

お会計

ウィロー・パターンにうっとり「スポード」

次に向かったのはスポード。こちらはミュージアムと実演をやっていたので、まずはそちらを楽しむことに。

型抜き

粘土を型に詰め、抜く作業の体験。割ときれいに抜けました。久々に楽しい粘土遊び。

転写1

見たかった転写の作業が見られました! まず簡単にプロセスを説明してくれて↓

転写2

銅板転写の技法で薄紙に模様を写し、器に貼り付けるところまで見せてくれます。

転写3

転写紙。お土産に私も1枚もらい、家で額装しました。柳(ウィロー)をあしらった中国風の絵柄「ウィロー・パターン」は、18世紀につくられるようになり、現在も定番の人気パターンです。

実は転写実演で見たこのウィロー・パターン、ここ数年気になっていた模様です。特に青い柳模様「ブルー・ウィロー」と呼ばれる柄の食器は各社が出していて、よく見かけます。これまでは素敵だけれど、自宅で使うには「ちょっと特徴がありすぎるかな?」「色が強すぎるかな?」と思っていました。

でも最近知人の家で見かけたり、カフェで使われているの見るたびに「そんなに料理を邪魔しないどころか、映えるのかも?」と思い、興味津々の柄だったのです。

こちらは前記Yさん所有のブルー・ウィロー柄のケーキ皿。チャリティーショップで格安で購入したそう。

スポードにもファクトリーショップがありました! 同社を代表するパターンの1つ、イタリアの風景画模様の「ブルー・イタリアン」が充実していましたが、私がもっぱら物色したのはスポードだけではなく、(たぶん)ストーク・オン・トレントのさまざまな会社のアウトレット商品や試作品が売られたコーナーです。

セール

同じ柄でも色が濃かったり薄かったりの食器たち。数ポンド~10ポンドぐらいまで。

普段私は買い物する際あまり迷わないのですが、ここでもまた迷いが。我が家には無地のお皿が圧倒的に多いのですが、「たまには華やかな柄物を使うと楽しいのではないか?」と、普段あまり考えないことを思い始めたのです。

セール2

ケーキ皿として重宝する大きさのサイドプレート(22cm~の中皿)がかなり充実していました。

あまり家でケーキを食べたりしないのに、ケーキを盛り付ける様子を想像してみて「いいかも」と思うお皿をひたすら物色。結果普段だったら絶対買わないようなパターンのお皿を何と7枚!も購入してしまったのです。

7枚

1枚5~6ポンドぐらい(約700~800円)だったこともあり、7枚も買ってしまいました。

一緒に行った旦那のヒトにも「ど、どうしたの…? 普段あまり買わない人が、今回ずいぶん頑張ったね!」「いつもは白黒ばっかりなのに、カラフル!」と驚かれましたが、私自身も何だかびっくりです。

重~い食器14枚を旦那のヒトと手分けして持って帰ってきました。帰りの電車は超満員。通路に地べた座り(これもまた楽しかったんですが)まあまあ大変だったのですが、「これで洋食器問題解決!」「ずっとほしかったバーレーも買えたし!」と思うと、足取りは軽やか。

写真手前、紺&白のベレー帽をかぶっているのがワタクシです。イギリスの電車は通路が狭いんです。(Photo: Mayumi Ohsaki)

そんな充実の1日だったのですが、実は私の走りだした「食器熱」はこれでは終わらなかったのです。

「サンバリー」でも目につくのは食器ばかり

翌々日、早起きしてロンドン郊外にあるサンバリー・アンティークマーケットに。今回友人のSさんが車を出してくれたので助かりました(Sさん、感謝です!)。

私とMさん(←彼女もストークでしっかり大量購入してました)は2日前の「食器“鬼買い”行脚」の後なので「今日は控えめに…」なんて気持ちもあったんですよね、出発したときは(笑)。

前回のコラムでも書いたのですが、私は今椅子も探していて、手ごろな値段で椅子がないかな?というのがサンバリーでの1番の目的でした。

朝もや

朝日に照らされたマーケット。

マーケット

しかし残念ながら、あまりピンとくる椅子がなく、「いいな」と思っても予算オーバー。

椅子

もう少し華奢なタイプのアームチェアを探しています。

残念…と思いつつも、椅子はないのになぜか目に付く食器たち!(笑)

紫

なぜかストークへの旅以来、花模様などの色付き&クラシカルな柄が気になります。

スタンド

そうそう、調理道具を立てるスタンドもほしかったんだ!と思い出してしまいました。適当な瓶に菜箸やら木べらを突っ込んでいたのですが、そろそろ事足りなくなっていたのです。

ガラクタ

こういう「ゴチャ」っとした中からお宝を探すのが楽しいのです。

そして…見つけてしまったのです。ガラクタ箱の中からコチラの面々を!

ブルーウィロー

段ボールにグチャっと箱に入っていました。よく見るとメーカーはバラバラです。スープボウルx10、間に溝が入ったスターター用皿 x 1、ボウルx 1、クリーム用ジャグ x 1

スープボウル

やや大きさの違うスープボウル。左は「Old Willow」社、右は「Churchill」社製。

メーカーはバラバラなのに、一緒に置いても違和感がなさそう。使いやすい大きさ。ホントはお皿が欲しかったけど、スープボウルもほしかったし!と思い、値段を聞いたら、全13ピースで18ポンド(約2500円)。ちょっと値切ると15ポンド(約2000円)になったので買ってしまいました!

加えマーケットでスタンドとソース瓶も買ったので、たった2日の買い物で、ワタクシ32ピースもの食器を買ってしまったことになります。

全部

こう見ると大した量ではなさそうにも見えるんですが…いえいえ、大量です。

上記に「いい出会いがあったらな~」とのんきなことを書いたのですが、出会い、ありすぎました(笑)。私にとっては数年に1度あるかないかの「爆買い」体験となりました。

後悔はないけれど、実は失敗も

食器は買ったらすぐに使いたいタイプです。今回買ったのは全部普段使いに出来るタイプのものなので、早速買った翌日から使っています。

使ってみての感想は、「柄や色は好みに忠実な方が失敗しない」「食器はあまり冒険しないほうがいい」というちょっと残念なものでした。

例えば「スポード」でどうしてもウィロー柄がほしくなり、あまり気にいっていないのに焦って買ってしまったこちら↓の2つのお皿。

ウィロー2枚

ちょっと迷ったのに、あまりの安さに買ってしまいました。反省。

色も柄も独特かつ強烈なので使いづらく、なかなか手が伸びません。

わざとバラバラに買って組み合わせを楽しみたかった中皿も、結局使うのは1番シンプルなこちら↓ばかり。

茶色

カラフルな食器を上手に使う“素敵生活”を実践している友人知人たちの真似をしてみたくてのチャレンジだったのですが、やはり趣味はそう簡単には変わらないことがよく分かりました。一度経験したので、次回はもう少し自分の好みに忠実に選びたいなと思います。

でもこれでそれなりに洋皿が揃ったので、これからは少し安心して友人たちを呼べそうです。

当分こんな爆買いはしないと思うのですが、たまにまとまった買い物をするのも楽しいですね。

せっかく買ったお皿にのせる料理も、楽しく頑張ろうと思います。

●バーレイ Buleigh
https://www.burleigh.co.uk/

●スポード Spode
https://www.spode.co.uk/

●サンバリー・アンティークマーケット
https://www.sunburyantiques.com/