ロンドンの1月、そして激動の幕開け

宮田華子 
ロンドン在住ライター。メディア製作会社に勤務後、2011年からフリーランスのライターに。デザイン、アート、建築、クラフト等を得意とし、文化&社会問題について日本の媒体に執筆。編集ユニット「matka」として、ウェブマガジンも運営している。2015年にロンドンで小さなフラット(マンション)を購入。日本とは異なる一筋縄でいかない「イギリス・家事情」に翻弄される日々を送っている。 
ウェブ:http://matka-cr.com/ 
インスタグラム:https://www.instagram.com/hanako_london_matka/

遅めのご挨拶ですが、みなさま、あけましておめでとうございます。

今年は仕事始めが遅めの「比較的長いお正月休み」だったと思います。イギリスでは多くの人がクリスマス直前から年明けまで休みます。今回は12月20日(金)が仕事納め、そしてカレンダー上は1月2日から平日だったものの、実際には1月6日が仕事始めでした。

長く休んでしまうと、日常に戻るのがなかなか厳しい(涙)―― これは世界共通です。

まだ家にある!? クリスマスツリー

すでに「年末年始はすっかり過去」と感じている方も多いと思うのですが、実はイギリスの場合はそうでもないんです。というのは、クリスマスツリーが割と最近まで飾られており、そしてまだ家にある場合も多いからなのです。

2枚並べてください 購入&ツリー

毎年12月になると登場するツリー専門の露店。今回もお店で1番小さなツリーを買いました。

かつてはクリスマスイブの日にツリーを飾り、クリスマスから12日目の日にクリスマス飾りを片付ける、というのが習わしだったそうです。現在は12月になるとすぐにツリーを飾り始める家庭が多いのですが「片付ける日」の伝統は今も生きております。今年の「12日目」は1月5日でした。

リース撤去1
リース撤去2

1月5日にロンドン中心部にある食専門の市場「バラマーケット」の前を通りかかると、巨大なクリスマスリースの撤去作業が行われていました。

役目を終えたツリーは地方自治体が回収してくれます。私が暮らすエリアの今年の回収日は1月13~24日。通常のゴミ回収スペースに置いておけば持ってくれるのです。回収されたツリーは資源として再利用されます。

または有料ですがチャリティー団体に回収を依頼することも可能です。支払った料金は慈善事業に使われます。

こちらはウェストヨークシャー州のスカウト・チームが行っている回収。チャリティーによる回収は都市部より地方の方が進んでいる様子です。

この回収システムが整っていないとツリーを気軽に買うことができません。毎年有難いシステムだなあと思っています。

この原稿を書いている現在、私の暮らすエリアはまだ回収日前ですので我が家のツリーは今も居間に滞在中です。飾りは取ってしまったけれど、まだまだ芳香を放ってくれています。

1月のイギリスは「Dry January」!

散々食べて飲んだ結果の重い体で迎える1月が「ダイエット月間」であることは、イギリスも日本も同じです。食事の節制はもちろんですが、イギリスでは「Dry January(1月はお酒を飲まないで過ごそう)」と言う言葉があり、1月に節酒/禁酒を誓う人も続出します。

ですので毎年この時期に注目されるのが、アルコールフリーのドリンク類。ここ数年は「ノンアルコール蒸留酒」が注目されており、スーパーマーケットなどでもよく見かけます。

世界初のノンアルコール・スピリッツ「Seedlip」。ナチュラル感を前面に出したボタニカルアートのラベルが特徴。1本(70ml)26ポンド(=約3700円)。

こちらはノンアルコール・ジン「Ceder’s」の2020年「Dry January」用のCM動画。瓶のデザインがクラシックで素敵です。1本(50ml)16ポンド(=約2300円)。

1本の値段はまあまあお高めですが、少量をトニックウォーターと混ぜて「モックテイル(ノンアルコール・カクテル)」にして飲むので1回の消費量はごくわずか。クリスマスプレゼントにも人気なのはちょっと嫌味?っぽいのですが(笑)、瓶も素敵なのでもらうと嬉しいギフトです。

そしてダイエットするなら運動も必須。スポーツジムのメンバーシップもクリスマスプレゼントとして大人気。「元旦を過ぎたらすぐにジム通い」の人もたくさんいます。我が家(私と旦那のヒト)もここ2年は12月に1年分のメンバーシップを「プレゼント」として更新しています。

ジム

我が家の近所にある「激安ジム」。基本的な運動機器、プール、ジャグジー、サウナ、さまざまなクラスもあるのになぜかとってお安くて助かっています。1年のメンバーシップが224.10ポンド(約31500円)。運動の後のシャワーまでしっかりここで済ませているので、我が家では「お風呂屋さん」と呼んでいます。イギリスのジムのメンバーシップ料金は通常月50~100ポンド程度なのでここは格安ですが、こうした「チープ・ジム」チェーンも増えています。

重くなった体を「何とかしなきゃ」、そして「新しい年だし気持ちも新たに」の2つに押されて、いつも以上にジムが混みあう1月ですが、同時に道や公園でジョギングする人たちも急増します。ここ数年イギリスでもジョギングが大ブームです。毎週日曜、イギリス全土の大きめの公園では、集まった人たちと5キロ走る「Park Run」も人気です。

「Park Run UK」のインスタより。この男性は200回目のPark Runだったそうです。

寒い時期はマラソン・レースも多いのです。1月~4月ぐらいまでは特に多く、5キロからハーフ&フルマラソンまで様々な大会が各地で開催されています。

ハイドパーク

ロンドンのど真ん中にあるハイド・パークで、毎年元旦の朝に10キロレースが開催されています。鉛色の空とランナーたちの厚着から、気温を察してください。応援団はランナーたちがスタートすると、カフェへまっしぐら。ゴール時間まで暖を取って待機します。

ハンプトン1
ハンプトン2

ヘンリー8世の居城として有名はハンプトンコート宮殿をぐるりと回る「ハンプトン・コート・パレス・ハーフマラソン」。今年は3月に開催予定。スタート&ゴール地点では、宮殿のPRもかねて、ヘンリー8世やアン・ブーリンの衣装姿の人がお出迎えしてくれます。街の人たちが沿道に出て温かく応援してくれるマラソンです。

実はかくいう私も…ノロノロ走っているのです。昔からの虚弱体質を何とかしたくて5年前から短い距離を「競歩ぐらいの早さ」で走っています。ずっと近所の公園や住宅街を走っていたのですが、一昨年の冬、夕方のジョギング中に派手に転んでしまいました。冬は午後3時半には暗くなってしまうロンドン。仕事が終わった夕方に走るので、冬場は野外ではなくジムのマシーン上でのランニングに切り替えました。

鈍足&運動音痴なので何年走っても走ることそのものが全然楽しくならないのが悲しいところ(涙)。でも走ることで健康になったことは実感しています。旦那のヒトもダイエットのために時折走っており、友人たちとレースにでることがあります。私も毎回「荷物番」として応援にいくのですが、野外を気持ちよさそうに走っている姿は見ているだけで爽快です。

リッチモンドパーク1
リッチモンドパーク2

こちらは4月に開催される、広大な公園、リッチモンドパークの5 & 10キロ・レース。4月でも朝は寒く深い霧がかかっていることも。イギリスのマラソン・シーズンは長めです。

私も数週間で蓄積された「歩くと振動する脇腹」を何とかしようと、「今年もダイエット&運動!」を決意したばかり。道や公園で元気よく走るランナーとすれ違うたびに触発されています。今年も地道にノロノロ走ります。

いよいよ「EU離脱」が現実のものに。

さてここからは、イギリスで暮らす私にはかなり深刻な内容です。

いよいよ1月末にイギリスはEUを離脱することになりそうです。前回の記事は12月12日のイギリス総選挙の前に書いたのですが、結果はジョンソン首相率いる保守党が下院の650議席中365議席を獲得し、圧勝しました。

青が保守党、赤が第2党の労働党です。

ジョンソン首相はEU離脱の是非を問う国民投票でも「離脱キャンペーン」を率いた「強硬離脱派」として知られています。保守党は今回の圧勝を「EU離脱への国民の承認が得られた」とし、現在の離脱期限である1月末に今度こそ離脱する様子です。

国民投票から3年半。離脱が繰り返し延期されている状況に国民たちが苛立ち、焦燥感を憶えていることは私も感じています。でもこの結果を「イギリス国民は早くEUを離脱したがっている」と取るのは少し違うような気がします。離脱反対派も多く、皆が足並み揃えて「EUを離脱したい!」と切望しているわけではないからです。しかし「先の見えない不透明感」に辟易しているのは確かです。

ロンドンと地方、そしてスコットランドや北アイルランドでは人々の考え方も立ち位置も異なるのですが、誤解を恐れずに言えばイギリス国民が「保守党に賛同したから」というよりも、最大野党である労働党が「票を取れなかった」ことが、保守党圧勝の理由ではないかなと私は思っています(この辺は大変長い話なので、いつか機会があったら書いてみたいです)。

昨年10月19日には「再国民投票を!」「EU離脱反対」を訴える「People’s Vote」のデモに100万人以上が参加し、EU離脱回避的気運も高まっていると感じていました。現在の政権でEU離脱するのは良いことだとは私個人は思っていないので、大変残念な結果でした。

「People’s Vote」のデモに参加したわたくしです。

こういうとき、選挙ができない外国人の悲しさを感じます。

1月末にEUを離脱しても今年末までは「移行期間」なので、直ちに何かが大きく変わるわけではありません。しかし地続きになっている北アイルランド(イギリス)とアイルランドの国境問題や、EU各国との通商条約を年内に結べるのか?等、不確定要素が山積みです。ジョンソン首相は「何があっても、移行期間の延長はしない」と法案も通してしまいました。

今後EU国との貿易すべてに関税がかかります。モノの値段は上がり、イギリスの個人資産の基盤である家の値段は下がり、そして人手不足になるのでは?とも言われています。

しかし、まだ誰も、どうなるのか分かりません。

そんな激動確定の2020年のイギリス。不安ではあるものの、この状況を見逃さず、将来この「EU離脱劇」を目撃者として説明できるように、しっかり見つめながら今年1年過ごしたいと思います。

本年もどうぞよろしくお願いいたします(ペコリ)。