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ワクチン・ロールアウトが進むイギリス

宮田華子 
ロンドン在住ライター。メディア製作会社に勤務後、2011年からフリーランスのライターに。デザイン、アート、建築、クラフト等を得意とし、文化&社会問題について日本の媒体に執筆。編集ユニット「matka」として、ウェブマガジンも運営している。情報経営イノベーション専門職大学(iU)客員教授。2015年にロンドンで小さなフラット(マンション)を購入。日本とは異なる一筋縄でいかない「イギリス・家事情」に翻弄される日々を送っている。 
ウェブ:http://matka-cr.com/ 
インスタグラム:https://www.instagram.com/hanako_london_matka/

※記事内容は2021年3月30日時点の情報によるものです。

三寒四温の言葉どおり、寒い日と暖かい日が交互に訪れている3月末のロンドンです。

青空の日も多くなってきました。近くの散歩道で。

3月8日からゆっくり始まったロックダウン緩和、3月29日からは野外で6人までは会ってよいことになりました。

このまま順調に感染が下がれば、4月12日から非必須店が再開し、飲食店もガーデン席であれば営業可能となります。

現在まだお店が閉まっていることもあり、街の雰囲気に大きな変化はありません。

3月8日に学校が再開した後も、ロンドン中心部はまだまだ静か。非必須店が再開するまでは、街中はこんな感じかもしれません。

しかし春の訪れを告げる移動祝祭日「イースター(復活祭)」は少しだけ開放的な気持ちで迎えられそうです。

今年のイースター連休は4月2日の「グッド・フライデー(聖金曜日)」に始まり、4月5日「イースター・マンデー」で終わります。「野外で6人まで会って良い」ルールになって直後の4連休なので、野外で友人との再会が叶います。

天気が良すぎると公園が混みすぎてしまうのでそれも心配ですが、少しだけでも「世の中が開いてきた」気分が味わえたらいいなと思っています。

イースターの定番食べ物の1つが、十字の模様が特徴の「ホット・クロス・バン」という名のパン。通常はレーズンがたっぷり入ったシナモン味なのですが、ちょっとお高級なスーパー「M&S」がチョコレート味を売り出し、現在話題です。温めるともちもち&しっとり風味がよりアップ! 焦げ茶色の生地なので十字架が浮き立ち、「イースターの食べ物」感をさらに醸し出しています。

ワクチンを接種しました

日本でもワクチン関連については大きな話題だと思います。イギリスでは昨年12月8日からワクチン接種が始まりました。16歳以上の希望者全員に接種するこの一大プロジェクトのことをイギリスでは「ワクチン・ロールアウト」と呼んでいますが、順調に進んでいます。

同世代や年下の人にも招待が届き始めたので「私もそろそろかな」と思っていたのですが、ついに私にも招待が届き、先日接種を受けてきました。そこで今回は、私のワクチン接種経験談をお伝えしようと思います。

ワクチンの招待は2つの方法で届く

ワクチンの招待は基本的に「イギリスに住んでいる16歳以上の人全員」に届きますが、漏れなく招待が届くよう、2つの方法で連絡が来ます。

1つは、自分が登録している最寄りの「家庭医クリニック(General practice、通称GP)」からの電話経由(電話がかかってくる、もしくは携帯電話へのテキストメッセージ)によるもの。もう1つは、イギリスの医療の母体である「国民健康サービス(National Health Service、通称NHS)」からの手紙(書面)です。

イギリスは無料医療を提供している大変ありがたい国です。外国人でも居住権がある人は、誰も無料で治療してもらえます。医療を受ける際、まずは自分が登録するGPを受診し、そこから必要であれば検査や大きな病院、専門医を紹介される、というのがイギリスのしくみです。全ての治療は「GP」がスタート地点です。

ロックダウンで閉店中のバーの壁面に描かれた、NHSに対する感謝のメッセージ。こうしたお店は多数あります。

初めてGPに登録する時に「NHSナンバー」という番号をもらえます。これは生涯変わらない番号で、イギリス国内、どこに引っ越し、どのGPに登録してもこのナンバーで紐づき、個人情報がNHS本体とGPの両方で管理・保存されています。今回のワクチン招待もNHSナンバーを基に、2つ機関(GPとNHS)から、2つの方法(電話/テキストメッセージと郵便)でお知らせがくるしくみです。

しかしそれでも漏れてしまう人がいるので(電話番号の変更や引っ越した先でGP登録をしていない等)、国は「現在〇〇歳以上の人の接種を行っています」と常に広報しており、該当年齢の人はNHSに電話するかNHSサイトにアクセスすれば、招待が来ていなくても接種の予約が出来るようになっています。

私の場合、まずGPからスマホにテキストが届きました。

私が登録しているGPからのテキストメッセージ。リンクをタップすると、GPからもっとも近い場所にあるワクチンセンターの予約画面に繋がります。

予約画面に生年月日などを記入し、最後に希望する日時を予約して完了。1分かからない作業でした。予約後再びコンファメーションが届き、摂取日前日にはリマインダーも届く念の入れよう。抜かりありません。

そしてNHSからの手紙も数日後に届きました。すでに予約済だったので、この手紙に関しては何もせずに放置して良かったのですが、「GPからの招待と何が違うの?」と思い、手紙に書いてあったログイン先にアクセスしてみました。

手紙でのワクチン招待。手紙にはワクチン接種のプロセスと、予約のためのコンタクト先が説明されています。必須情報は17カ国(英語、アラビア語、ベンガル語、スペイン語、ペルシャ語、グジャラート語、ヒンズー語、クルド語、中国語、ネパール語、パンジャブ語、ポーランド語、ルーマニア語、ソマリア語、アルバニア語、タガログ語、ウルドゥー語)で記載。同封のパンフレットに、副反応についても解説もあります。

要は、ワクチンセンターの選択肢が違うということだけのようです。GP経由の招待ではワクチンセンターは一択で、GPにもっとも近いワクチンセンターが指定されています。しかしNHSからの手紙経由では、もう少し広い選択肢でワクチンセンターを選べるようになっていました。他には違いはなさそうです。

私は注射が大嫌いです。これまでの人生で散々痛い注射を経験してきましたが、何度やっても慣れません(涙)。でも、今回のワクチンに関してはいろんな人が「痛くないよ」と宣伝してくれているので、その言葉を信じて…ドキドキしながら接種の日を待ちました。

心の支えは「あれ?もう終わったの?」のジェスチャーをした、俳優“サー”イアン・マッケラン様の接種風景。

イギリスのワクチンCM。エルトン・ジョンが「ワクチンCM出演のためのオーディションを受ける」という設定。最後に大御所マイケル・ケインが登場し「痛くないよ」と言ってくれます。

あっけないほど…あっという間のワクチン接種

すでに何人もの友人が接種済みだったので何となく様子は分かっていましたが、私が暮らす地区の場合、接種担当医師が行政区と協力し、地域のワクチン・ロールアウト状況を毎日ツイッターで教えてくれています。

こちらのニックさんです。

ニックさんのツイッターを1カ月ほど前に見つけて以来ずっと見ていたので、さらに安心につながりました。

さていよいよワクチン接種の日。肌寒い日でしたが、コートの下に腕を出しやすい半袖の服を着て出かけました。我が家の斜め前にある教会のホールがワクチンセンターになっています。

ボランティアスタッフが明るい声で出迎えてくれました。

接種までのプロセスを写真に撮りたい…と思っていたのですが、この列に並んで5分後にはすべてが終了してしまいました。

あまりに早く、「撮影してもいい?」の許可を取る暇もなく出口に誘導されてしまったのです。ですので下記、ニックさんのツイッター写真でご紹介します。

まず建物に入るところで検温。
平熱が確認されると、受付。

受付ブースが4~5つあり、生年月日と名字から予約者であることを確認すると、ワクチンの説明が書かれた小さなパンフレットをくれます。

そして注射の順番を「ソーシャルディスタンス」を保った状態で待つのですが…ここまでで2分ぐらい。

定位置に立って15秒ぐらいで接種ブースに呼ばれました。

医師か看護師か分からないのですが、女性の担当者が「最近、咳や発熱はありましたか?」等、現在の私の体調を確認。そしてワクチンの副反応を説明した後、「利き腕の反対に打ちます」と言われます。

左腕を出し、彼女が腕に触れた?と思ったら、もう終了していました。針が刺さったのが分からないほど。まったく痛くなかったです。

余りの早業(0.2秒ぐらい)に驚き「えっ! 終わったの?」と聞くと「痛くなかったでしょ? また11週間後にね。バ~イ!」と朗らかな声(マスクをしているので笑顔が見えないのが残念)で言われました。そして薬(アストラゼネカでした)とバッチナンバーを書いたカードが手渡されました。

名刺サイズのカードに、接種情報が書き込まれています。

その後、別室で15分待機してから帰宅なのかと思ったのですが、ボランティアによって出口に直接案内されました。

「あれ? 15分待機するのでは?」と聞くと、「アストラゼネカの場合、待機は不要なの」と言われました。しかしこの対応はワクチンセンターによって方針が異なるようです。アストラゼネカ接種でも、15分別室で待機した人もたくさんいるようです。

この日に同ワクチンセンターで接種を受けた人は全部アストラゼネカの接種だったようです。現在イギリスではファイザーとアストラゼネカのワクチンが接種されています。モデルナ社製のワクチンも認可済みですが、また接種されているという話を聞きません。

待機室ではボランティアの方がピアノを弾いていた日もあったようです。良い雰囲気ですね。

本当にあっけなく接種が終わりました。その時点では元気だったので、普通に買い物をして家に帰りました。

副反応は、人それぞれ

接種前に担当者から「数時間後以降、倦怠感、頭痛、悪寒、微熱、腕の痛み等の副反応がでるかもしれません。パンフレットに書いてあるように対処してね」と言われました。

この辺の副反応についても友人知人から散々聞いており、またSNSでも情報が飛び交っているので大体把握していました。

そして私にも、ほぼ予想通りの反応が起こりました。私は午前中に接種したのですが、午後から猛烈に眠くなりました。座っていられないぐらいの強烈な眠気で、昼寝をしたほどでした。

そして夜にわずかですが寒気がし、微熱(といってもほんのちょっと。36.度7分)が出ました。頭痛はほんの少し感じたところで、パンフレットに書いてある通り鎮痛薬(イギリスでもっとも一般的な痛み止め「パラセタモール」)を飲むとすぐに消えました。「今晩は夕飯を食べてすぐ寝よう」と思い、食べはじめたら強烈に気分が悪くなってしまいました。食べたことを大後悔。その日はそのまま寝てしまいました。

パンフレットには副反応についても明記されています。

翌朝、悪寒も微熱も気分の悪さもなくなっていましたが、なんとなくぼんやりだるかったので、1日中漫画を読みつつゴロゴロ過ごし、夕飯までは水分をたっぷりとるだけで何も食べずに過ごしました。夕方までにはいつも通りの体調に戻っていました。

翌々日の朝に、少~し腕に「何か」を感じましたが、痛みというほどではなく「ちょっとした張り」程度でした。

私はこの程度の症状でしたが、「4日間寝込んだ」という人もいましたし、「まったく何も副反応は起こらなかった」という人もいました。発症する症状はある程度限られ、共通性がありますが、どの症状が強く出るかも含め、副反応は本当に人それぞれです。

なので先に「出やすい副反応」のオプションを知っておくことは良いことですが、自分がどうなるかは打ってみないと分からないので心配しても仕方がありません。人間の体は本当に「十人十色」なのだと改めて思った経験でした。

ボランティアの層の厚さに感動

今回ワクチン接種を受けてみて、接種プロセスがかなり精巧に計算されていていることを実感しました。NHSナンバーを起点にした招待から、ワクチンセンターでの手順まで、すべてが大変システマティックです。

自分の目で「いかに現場がスムーズか」を確認したこともあり、この国をあげての一大プロジェクトがうまくいっているもの理解できるな、思いました。実はイギリス、こうしたマネージメント・システムを開発するの「だけは」本当に本当に上手いんです(もちろんダメダメなこともたっくさんありますよ)。

そしてもう1つ、ボランティアの層の厚さについても強く感じました。

ワクチンセンターにはたくさんの人たちがスタッフとして働いていましたが、たぶん半分以上の人がボランティアスタッフです。入口で「ハロー」と言って出迎えてくれる人から、受付の人、順番待ちの指示をする人、最後に見送ってくれる人まで、医療従事者以外のスタッフのほとんどがボランティアで構成されている様子です。

イギリスの人気ドラマ『ダウントンアビー』で主人公・グランサム伯爵を演じたヒュー・ボネヴィルさんもボランティアに参加。BBC日本語版の、ちょっとほっこりする記事です。

彼らのにこやかな働きに、大変元気づけられました。

またコミュニティーもワクチン・ロールアウトに協力的です。近隣の飲食店がスタッフ用に食事や軽食を差し入れているそうです。

この日のワクチンセンターのスタッフ用ランチは、イギリスの国民食と言えるカレー。地域のムスリムコミュニティーからの提供だそう。センター内でスタッフ控室がチラリと見えましたが、確かに美味しそうなものが山積みでした。

今回のワクチン・ロールアウトは、イギリスの長所がうまく活かされているようです。たった5分のワクチン接種でしたが、いろんなことを感じた貴重な時間でした。

私の2回目の接種は約11週間後です。現在の予定では、その頃にはイングランドのすべてのソーシャルディスタンス策が解除になっている予定です。

しかしこの予定はあくまでも希望的観測に基づくもの。感染が少しでも上がれば、緩和は一時中止となります。

このまま予定通りに感染が下がり、少しずつ街が明けていってほしいと願っています。そのために羽目を外さず、ルールを守って引き続き静かに暮らします。

皆様も、どうかご自愛ください。

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