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【リノベ】日本人夫婦が探し当てた「心地よいシンプリシティ」

宮田華子 
ロンドン在住ライター。メディア製作会社に勤務後、2011年からフリーランスのライターに。デザイン、アート、建築、クラフト等を得意とし、文化&社会問題について日本の媒体に執筆。編集ユニット「matka」として、ウェブマガジンも運営している。情報経営イノベーション専門職大学(iU)客員教授。2015年にロンドンで小さなフラット(マンション)を購入。日本とは異なる一筋縄でいかない「イギリス・家事情」に翻弄される日々を送っている。 
ウェブ:http://matka-cr.com/ 
インスタグラム:https://www.instagram.com/hanako_london_matka/

7月19日にイングランドにおけるコロナ対策が完全緩和して以来、少しずつですが行動範囲が広くなっている今日この頃です。

久々の場所に行くと、様変わりしていて驚きがあります。

以前、イギリス人の友人宅の「お宅拝見」をこのコラムに書きました。ずっと第2弾を…と思いつつも、コロナ禍になってしまいました。

この1年、「緩和したら真っ先に伺いたい!」と思っていたのは友人であるChiyoさん、Koheiさんご夫妻の新居でした。

ChiyoさんとKoheiさん。

医療機器メーカーの社員として働く傍ら、パーソナルファイナンスの情報発信もしているChiyoさんと、ロンドンの建築デザイン会社に勤務する建築家のKoheiさん。このご夫妻と私は、2人が「家を買いたい」と真剣に考えているときに出会いました。

Chiyoさんのパーソナルファイナンスに特化したインスタより。

その後、2人は2019年11月にロンドン南東部にフラット(=マンション)を購入しました。

ChiyoさんのTwitterから。

要リノベであることを理解した上で購入した2ベッドルームフラット。この家のリノベ過程を、ChiyoさんがTwitterで発信していたので、楽しく見ていました。

イギリスには「古い家を買って自分で直す」文化がありますが、実際にやるのは本当に大変な作業です。

しかし2人の家のトランスフォーメーションぶりがあまりに素晴らしく、日々感動しながらChiyoさんのTwitter更新を待ち、そしていつか伺える日を首を長くして待っていました。

↓この状態で購入したお家を…

下見のときの写真。元オーナーが改装をはじめていたこともあり、壁がはがれた状態で購入。すべてのリノベ前写真はChiyoさんとKoheiさんから提供いただいたものです。© Chiyo & Kohei

こんな素敵なインテリアに仕上げたのです!

© Chiyo & Kohei

まったく別の家に見えますよね? 

建築家であるKoheiさんは、家の立地や広さに加え、光の入り方、間取りを考えた上でこの家のポテンシャルを見抜きました。そして2人のアイデアを集結してリノベに着手。購入後3カ月間は元の賃貸フラットに住みながら新居に通い、ビルダーさん(大工兼建築全般を担う技術者)の手を借りながらリノベを進めていきました。

フロア板は全室すべて同じ白無垢タイプのものを採用。フローリングは既存のカーペットや板を剥がし、床レベルを整える等、通常は業者に委託する難しい作業です。しかし少しだけビルダーさんに手伝ってもらったものの、基本的に2人で完成させたのだから…すごい!です。

2020年3月中旬に引っ越し。その後は住みながらリノベを続けたそうです。

そしてこのほどリノベがほぼ完成したと伺い、やっとやっと、念願叶ってお邪魔してきました。前振りが長くなりましたが、長~い前振りをしても足りないほどの素晴らしいお宅なのです。

扉をあけると、カフェのような空間が広がる

玄関のドアをあけると、透き通るような白に黒の指し色の世界が広がります。

透明感のある壁の色。こだわった上で慎重にペイントの色を選びました。

リノベ前は…こんな感じ↓でした。

ほぼ同じ位置から見た、物件下見時の写真です。間取りこそ同じでも、「同じ家なの!??」的大トランスフォーメーションぶりは分かっていただけると思います。© Chiyo & Kohei

玄関を背に中に入ると、まず左手にバストイレがあります。廊下の右手はリビング、左手がキッチン、突き当りにベッドルームが2つある、という間取りです。

複雑な形のリビングを活かす、工夫の数々

まずはリビングルームから。機能的かつ視覚的にもインパクトのあるフレンチドアがまず目を引きます。格子の黒が美しく映えるだけでなく、暗くなりがちな廊下に採光を入れる効果を考えた上での採用です。

ガラス越しにキッチンとリビングが見通せるので一体感があり、ドアを開ければオープンキッチンのような感覚も味わえます。

こちらが↓既存のドア。左手側にガラスのパネルとドアがついていました。

ChiyoさんのTwitterより。以下、エンベッドはすべてChiyoさんのTwitterからです。

これを全て取り払い、フレンチドアの大きさに枠を調整して設置しました。

中に入ると、木の質感が素敵なテーブルと、イームズのシェルチェアが置かれています。

オレンジが映えるイームズ・シェルチェア。

テーブルの横にある窓から光が差し込みます。

リビングは長方形ではなく、凹凸のある複雑な形状をしています。この形状を活かしたリビングにするため、Koheiさんは「家具の配置にこだわりました」と語っています。

例えば、ソファーをL字型にしたもの工夫の1つ。

座り心地のよい、グレーのソファー。下に敷いた洗いざらしの質感のラグもこだわって選んだもの。

2人でくつろげる形・サイズというだけでなく、1人がソファーに、1人がダイニングテーブルにいる場合でも、部屋全体として程よい一体感が生まれるようにと考えて選定・配置しています。

壁のへこんだ部分の上部にビルトイン方式で棚を入れたのは、白の一色で退屈になりがちな空間の上部に色や素材感のあるアクセントをつけるための工夫。

家具の多くは床に置くため、多くの素材感やアクセントは「下」に行きがちです。しかし高い位置に棚を配置し、グリーン等を置くことで部屋全体に統一感を保ちながら個性を出すことが可能です。またこの部分にテレビを配置することで、テレビの存在感を消す効果も発揮しています。

リビングのアクセントと1つとなっている暖炉跡も見逃せません。もともとは、床部分に台がついている形状でした。

Chiyoさん曰く「お墓のよう」だった、元の暖炉跡。

現在煙突は使われていないので、暖炉跡を塞いでいる家が多いのですが、インテリアとして生かしている家もたくさんあります。2人は塞いでいるパネルと取り外し、レンガ状のタイルを貼り、棚と同じ木のマントルピースを設置しました。

そしてヴィンテージ感を醸し出す場所に仕立てました。

完成後の現在の暖炉跡。あえてオリジナルの暖炉内部を見、レンガを詰みあげたような雰囲気に仕上がっています。© Chiyo & Kohei

リビングルームだけでも語りどころがまだまだあるのですが、長くなるのでキッチンに移動します。

全リノベが必要だったキッチン

タイルとワークトップの白に、無垢の木の小物類、ブロンズの取手がアクセントになっています。カフェ感満載のシンプルで統一感のあるキッチンです。

キッチン収納部分の取手は上品な佇まいのブロンズ。黒で統一されたティーキャニスターも真似したくなるテクニックです。

この素敵なキッチン、元はこんな感じ↓でした。

これは下見時の写真です。© Chiyo & Kohei

この段階ではキッチンの表面部分をある程度手を入れるだけの予定だったそうです。しかしその後元オーナーが中途半端な改装を進めていたことが発覚。

Chiyoさんのブログより。このブログ記事で、キッチン改装の大変さがよく分かります。

壁のタイル、システムキッチン、食洗器やガス台などの機器類、ワークトップなどすべて総取り換えしなくてはならないことが判明。

Koheiさんが描いたデザイン画。© Chiyo & Kohei

住みながらリノベを続け、しかもキッチンが使えない状況が長く続いたのは本当に大変だったと思います。

途中でボイラーが壊れていることも分かり、またワークトップ測り直しのトラブルも発生↓。

しかし2人の粘り強い闘いの末、こんなに素敵なキッチンが完成しました!

キッチンでくつろぐ2人。本当に絵になります。Koheiさんが手にしているAlessiケトル、実物を見せていただき我が家でも購入を決意しました(笑)。

2つのベッドルームの異なる「収納法」

2つあるベッドルームですが、1つは現在、在宅勤務中のKoheiさんの仕事部屋として(Chiyoさんはリビングで在宅勤務中)、もう1つは寝室として使用しています。

仕事部屋は片側に収納を集約させ、すっきりとした収納が特徴です。

© Chiyo & Kohei

IKEAの白い棚を並べ、小物は同じストレージボックスの中に収納。見せる&見せないの両方を上手に組み合わせた収納法です。© Chiyo & Kohei

片や寝室は「見せない収納」を徹底しています。

壁2つ分のスペースをたっぷり収納家具に使用し、表面にはプラント以外のものをほとんど置いていません。

大きなクローゼットの扉は鏡になっているので、部屋が広く見える効果も。© Chiyo & Kohei

引き出しの上のボードはサイズを測って別途購入したもの。板に印字が入ったものが納品される等のトラブルもあったそうです。この台が広いので「取りあえず」仮置きしたくなりますが、何も置かないように気を付けているとのこと。

小物類がほぼないので、グリーンの色が美しく生える静かな空間です。

ちなみにリノベ前はこんな状態↓でした。

ベッドトップの周りをぐるりと囲む形のFitted Wardrobe(作り付けのクローゼット)。イギリスではよく見かけます。© Chiyo & Kohei

光沢のある木目調の家具は現在のトレンドではありませんが、20~30年前にリノベした家にはこの手の素材を使った作り付け家具が多い印象です。この作り付け家具の解体は難儀だったそうですが、取り外した上で壁・天井・床、すべてのリノベを行い、現在の寝室に仕上がっています。

黒のラインを活かしたバスルーム

最後にバスルームを紹介します。墨絵のような美しいグラデーション模様が描かれた大きなタイルを使用し…

© Chiyo & Kohei

ツール類の多くを黒でまとめ、キリッと引き締めています。清潔感のある癒しの空間です。

黒のシャワーが空間のアクセントになっています。© Chiyo & Kohei

ヒーターのパネルも黒で統一。© Chiyo & Kohei

リノベ以前はこちら↓。

© Chiyo & Kohei

しつこいようですが(笑)…全く別物です。

2人の「心地よさ」を追求した家

2人がリノベする上で最も大切にしたのは「今、2人が心地よいと思う」空間作りだったとのこと。

インテリアの流行は変化し、また自分たちの好みやライフスタイルも変わっていくものです。将来模様替えがしやすいように白を基調とし、また扉や取手も「家を傷つけずに取り外しが可能か?」に配慮した上で選び、デザインしたそうです。

玄関を入ってすぐのラジエーターの上に、カギを置くコーナーを設置。とても便利そう。

そしてこのリノベの大部分を2人でやり切った…というのが本当に本当にすごいのですが、ここまでのことを業者に一括委託せず、ほとんどを自力でできたのは、アイデアを具体化するための知識のある建築家のKoheiさんの力あってのこと。

Koheiさんが描いたバスルームのデザインイメージ。普通の人にこんなイメージ画は描けません(笑)。そしてこのイメージにするために何を揃えるのか、見当もつかないはずです。© Chiyo & Kohei

「ちょっとDIYが得意です」的な人では絶対無理!なレベルのリノベです。本当に羨ましい限りです。

今回ここに書ききれなかったことも含め、こだわりがパンパンに詰まった2人の家。リノベはひと段落したと思いますが、今後マイナーチェンジしていく様子も楽しみです。

そしてちょっとでも変わるごとに押しかけますので、Chiyoさん、Koheiさん、どうかご覚悟を!(笑)

家を開放してくださり撮影・取材に協力してくださったChiyoさん、Koheiさん、ありがとうございました。
※Chiyoさんはご自宅のことをTwitterで引き続き更新しています。この素敵なお家のその後はこちらから。

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