宮田華子
ロンドン在住ライター。メディア製作会社に勤務後、2011年からフリーランスのライターに。デザイン、アート、建築、クラフト等を得意とし、文化&社会問題について日本の媒体に執筆。編集ユニット「matka」として、ウェブマガジンも運営している。情報経営イノベーション専門職大学(iU)客員教授。2015年にロンドンで小さなフラット(マンション)を購入。日本とは異なる一筋縄でいかない「イギリス・家事情」に翻弄される日々を送っている。
ウェブ:http://matka-cr.com/
インスタグラム:https://www.instagram.com/hanako_london_matka/
冷夏が終わり、このまま一気に冬に突入?と思ったらここ数日小春日和が続いています。寒暖の差が激しい今年の秋のロンドンです。
暖かかった日の夕方、パブの外で立ち飲みする人々。コロナ禍以前はこうした光景は普通でした。1年ぶりにやっと復活してきたところです。
イングランドのコロナ対策は7月に完全緩和していますが、その後も細かな変更点があり、さらなる緩和が進んでいます。
ロンドンの目抜き通り「Oxford Street」、平日の様子。人出も戻ってきています。
10月から多くの企業が「週2~3日の出社義務」になるので、通勤者がどっと増える見込みです。少しずつ日常が戻りつつあると感じています。
大規模なコンサートやイベント等も開催され始めているロンドンですが、先日「ロンドン・コーヒーフェスティバル」(9月23~26日)に行ってきました。これは2011年から毎年3月、ロンドン中心部からやや東にある「The Old Truman Brewery」(ビール醸造所跡地のイベント会場)で開催されているコーヒーとカフェカルチャーに特化したフェスティバルです。昨年はコロナ禍のため「3月開催予定→6月開催に延期→結局キャンセル」になりました。今年も元々は3月の開催予定でしたが9月開催に変更され、2年半ぶり、満を持しての開催となりました。
水色とピンクのデザインの公式紙コップ。
バリスタ・コンペティション開催中のスペース。
こちら(↑)の写真を見て「こんな密なの!?」とびっくりされる方も多いかもしれません。
しかし安全対策はしっかりしていました。「ワクチン2回接種済+2回目接種から14日以上経過」もしくは「PCR検査による陰性証明」を見せ、検温を通過した人のみが入場できる、という方式です。入場者数も3割減。消毒ジェルをあらゆる場所に設置し、完全キャッシュレス化も採用していました。
「ロンドン・コーヒー・フェスティバル」公式インスタに掲載されている入場条件の説明。
イギリスは「紅茶の国」という印象が強いが強いと思います。確かにその通りなのですが、実はコーヒーも人気なのです。
今から約20年前にイギリスにコーヒーブームが到来しました。本格的イタリアンコーヒーを提供するカフェチェーンがどっと増え、その後、おしゃれな独立系カフェも続々と登場。特にロンドンは美味しいコーヒーを提供するカフェがひしめく「コーヒーの街」となり、今に至っています。
シナモンロールとコーヒーの組み合わせが最高な、大好きなカフェ「Nordic Bakery」。
そんな「コーヒーの街」で開催されているコーヒー・フェスティバル。ロンドン人のコーヒー愛が高まるのと比例し、年々規模を拡大。今年は「地球一大きなコーヒーパーティー」のキャッチコピーでPRしていました。
4日間の開催ですが、最初の2日間はコーヒー&カフェ関連業者&プレスのみの「インダストリー・ディ」、後半の2日は一般入場者がメインになっています。コーヒーやカフェ“関連”と一口に言っても幅広く、例えばコーヒーマシーンや焙煎機を販売する会社から…
機関車の形をした焙煎機の製造販売業者。
カフェ等で導入されているシステムやアプリを販売する会社、
決済システムやアプリを提供する会社のコーナー。最近は完全キャッシュレス決済のカフェが増えているので、こうしたシステムの需要は高いです。
コーヒー豆の焙煎&卸をしているロースター、
イギリス各地から集まったロースターが小さなブースを出展しているスペース「ロースタービレッジ」。
カフェで提供するケーキの製造・卸し業者、
カスタムメイドのケーキをカフェに卸す会社。ヴィーガンケーキの種類が豊富でした。
等々、出展業者は多岐に渡ります。私は初日のインダストリー・ディに行ったので業者同士の活発なやり取りが見られ、コーヒー業界の勢いを肌で感じました。
様々なロースターのコーヒーが試飲でき、その場で購入することも可能。コーヒーの淹れ方やラテアートの実演もあり、何時間いても飽きることのない楽しいイベントです。
美味しいコーヒーの入れ方のラテアートの実演中。
私は一昨年もこのイベントに来ていますが、前回も今回もコーヒーの試飲と同じぐらいコーヒー以外の試飲・試食もたくさんし、食産業のトレンドを発見できる場となっています。感想はいろいろあるのですが、今回特に強く思ったことをいくつか挙げてみます。
ヴィーガン人口は増える一方の昨今、特に環境問題にコンシャスな若者世代でヴィーガンになる人はとても多いです。
カフェのメインターゲットがこの世代なこともあり、どのカフェにもヴィーガンメニューに力を入れています。そしてヴィーガン用の植物性代替ミルクも必ず置いてあります。長い間「代替ミルク=豆乳」でしたが、現在は「オーツミルク」がトレンドのようです。
最近スーパーでもカフェでもよく見かけるオーツミルクブランド「Oatly」。
今回さまざまな新作系ドリンクを試飲しましたが、ラテ等の乳成分が必要なドリンク類では(牛乳ではなく)あらかじめオーツミルクを使用していたものが多かったです。これは出展者が試飲をすすめる際、最初からヴィーガン仕様で提供すれば「ヴィーガンか?そうでないか?」を確認しなくても良いからなのですが、一昨年に比べて「(代替ミルクの中で)オーツミルクが優勢」という印象を強く受けました。
抹茶パウダーブランド「Matcha and Beyond」のブースにて。シナモン、ショウガ、ターメリック(ウコン)、胡椒がブレンドされた抹茶「Spiced Match Blend」とオーツミルク作ったラテを飲ませてもらいました。
オーツミルクは他の代替ミルクと比較し、飲んだときに感じる舌ざわりや喉ごしが牛乳と似ています。ふわりと香る麦の匂いが気になるかどうか?が好き嫌いを分けるカギのようです。
個人的には代替ミルクの中でもっとも好きなのはアーモンドミルクです。クセがなく、ナッツの香ばしさがコーヒーにも紅茶にも合うのです。ナッツ好きな人にはお勧めです。
アーモンドミルクのブランド「Almond Bleez」のブース。アーモンドミルクは大きめスーパーであれば大抵手に入りますが、「どのカフェにも置いてある」レベルではないので、もう一歩浸透してほしいなあと期待しています。
今回も様々な珍しいドリンクを発見しましたが、中でも1番驚いたのがコチラ。アイスコーヒーを専門とするブランド「Jimmy’s」が開発した「Coffee Cola」です。
その名の通り、コーヒーとJimmy’sオリジナルのコーラをブレンドしたドリンク。「コーヒーとコーラが合うの?」と恐る恐る試飲したのですが…これが結構合うのです(笑)。
コーラのさっぱりした甘さにコーヒーが苦みを添え、すっきり感が高まります。キンキンに冷やしたコーヒーコーラを、スパイスたっぷりの辛い系の食事に合わせると美味しそうです。
Jimmy’sのブースにて。試飲すると、皆一様に「悪くない!(not bad)」と言っていました。
コーヒーというと、当然ですがコーヒーの色「黒」のイメージですよね。ブースも商品のパッケージも何となく「黒」を基調にしたものが多くなりがちです。
何となく黒っぽいブース。スタッフのユニフォームも黒のTシャツやエプロンが多くなりがちです。
もちろん今年も黒系のブース&商品をたくさん見たのですが、例年以上にカラフルな色味のデザインを押し出したものが多かったのです。以下、いくつか写真を紹介します。
イングランド中部Staffordにあるロースター「Hasbean」。パッケージ、カップ、そしてブースの壁をビビットな赤で揃えたブースはひときわ目立っていました。エコバッグも可愛いかったです(欲しかったのですが言い出せず…笑)。
カフェチェーン「Daisy Green」が新発売する缶入りコーヒー豆シリーズ。キャンベルのスープ缶をカラフルにした感じ? プレゼントに喜ばれそう。
スコットランド・エジンバラのロースター「Common」は原色&イラストを前面に押し出したデザイン。
コーヒーブランド「Taylors Discovery」。黒の背景に印象的なイラストが映えます。
カラフルな色がアイキャッチとなり、ビジターの足を止めていたエコ容器業者のブース。バイオプラスチック製透明カップやホットドリンクのフタも豊富でした。
毎年ロンドン・コーヒー・フェスティバルにはチョコレートブランドのブースもたくさん出展しますが、こちらはイギリスの巨大菓子ブランド「キャドバリー」創業者の
シックな色が「時代に合う」ときもあります。しかしコロナ禍を経た現在、カラフルで明るい色を素直に「いいな」と思う人も多いと思います。ポップなデザイン、そして弾けるように鮮やかな色が目に心地よく映りました。
来年のロンドン・コーヒー・フェスティバルは、例年通り3月開催に戻るとアナウンスされています。楽しみであると同時に、「半年後、世の中はどうなっているの?」とも思います。
散々フェスティバル内を歩きまわった後、最後にラウンジでコーヒーマティーニを飲みました。キリッと冷たく、甘さとほろ苦さが混ざりあった味は格別でした。また半年後に同じ場所で飲みたいです。
ロンドンの日々の暮らしはどんどんコロナ禍以前に戻っています。「こんなに緩和して大丈夫?」と思いつつも、同時に「その心配にも慣れてしまった」と思うこともあります。矛盾するようですが、これが現在の正直な気持ちです。
通勤者が増えることで、街の様子もまた変わっていくと思います。状況によってはコロナルールが又厳しくなるかもしれませんが、それは誰にも分かりません。今はただ、安全を心がけ、こまめに検査をし、そして可能な範囲で楽しく過ごしたいなと思う毎日です。
無料で配布されている自宅用ラテラルフロー式の検査キット。検査の結果をオンライン経由で国(イギリスの国民健康保険であるNHS)に登録すると(任意)、研究・集計の情報源になります。
日本の状況も毎日確認し、心配しています。どうか皆様もご自愛ください。
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