新しい家探し。我が家の「新章」のスタートとなるか!?

宮田華子 
ロンドン在住ライター。メディア製作会社に勤務後、2011年からフリーランスのライターに。デザイン、アート、建築、クラフト等を得意とし、文化&社会問題について日本の媒体に執筆。編集ユニット「matka」として、ウェブマガジンも運営している。情報経営イノベーション専門職大学(iU)客員教授。2015年にロンドンで小さなフラット(マンション)を購入。日本とは異なる一筋縄でいかない「イギリス・家事情」に翻弄される日々を送っている。 
ウェブ:http://matka-cr.com/ 
インスタグラム:https://www.instagram.com/hanako_london_matka/

※記事内容は2022年3月1日時点の情報によるものです。

まだまだ寒い日が続いているロンドンです。厚手のコートを着ていないと外に出ていけないのですが、それでもストリートマーケットでは春の花が売られるようになりました。

春を告げる花の1つ、黄色い水仙。3束で1ポンド(150円)と格安で販売されていました。

「春の兆し」を少しだけ感じ始めたこの頃ですが…現実社会では、辛く、恐ろしいニュース一色になっているのは日本もイギリスも同じだと思います。

3月1日朝のBBCオンライン版トップページのキャプチャ画像。通常とレイアウトを変えて、ウクライナ情勢のライブレポートをトップに持ってきています。Copyright © 2022 BBC

2月24日(木)にイングランドはさらなるコロナルールの緩和がありました。検査で陽性であっても自主隔離義務がなくなったのです。

本来ならこのルール変更は大変大きなニュースなのですが、ロシアのウクライナ侵攻と同じタイミングだったこともあり、現在コロナについてのニュースは控えめです。

またイギリスでは昨年秋からエネルギー料金の沸騰問題が人々を悩ませています。まだまだ寒いのですが、暖房使用を控える人も多いほどです。ガス電気代が例年の倍以上になるほどの高騰に、我が家も大打撃を受けています。

そんな暗いニュースに覆われ、誰もが不穏な気持ちを抱えつつ3月を迎えています。

もしかしたら引っ越し!? 新たな挑戦(をするかもしれない)!?

さて今回は、(超個人的な話で恐縮ですが)「我が家の住み替え!?」について書いてみたいと思います。

コロナ禍になってからの2年間、静かに過ごしてきた私ですが、ずっと考えていたことがありました。それは「これからも今の家に住み続けるのか?」ということです。

現在住んでいる小さなフラット(=マンション。2寝室&1居間)を購入したのは2015年7月です。今から2年前、2020年の3月に真剣に住み替えを考えたことがありました。住宅ローンの借り換えの時期が迫っていたからです。

家の値段が購入時よりも少し上がっていたこともあり「今の家を売って、庭付きの家に住み替えられるかな?」と思い始めました。

しかし行動に移そうと思った矢先に、ロックダウン開始。何もできなくなってしまいました。

仕方なく「住み替え計画はいったん白紙」とし、そのままローンを組み替えた…という経緯があります。

イギリスと日本、不動産事情はまったく違う

コロナ禍の2年は長かったですが、「あれからもう2年!?」と思うとあっという間でもありました。あと数カ月後の7月に住宅ローンの組み換え時期がまたやってきます。そこで再び住み替えを考え始めたのです。

イギリスと日本では「不動産事情」および「住宅に対する考え方」がまったく違います。どれだけ違うのかというと…簡単に異なる点を羅列してみます。

■家の値段は基本的には下がらない。経済の上昇と共に上がり続けていく
■値段が下がらないため、不動産が個人資産の要
■築年数は値段に関係がない(「新築時=1番高い」ではない)
■住宅ローンを完済する気がない人も多い(「最後に売ればいいだけ」と考える)
■生涯に何度も住み替えをする人が多い
■家を何軒も持っている人も多い(自宅および投資用物件)
■自宅として住んでいる家を売却した場合、利益がでても無税(投資目的の住宅には課税される)
■新築マンションは存在するが、新築一戸建てはほとんどいない。

1つ1つ説明すると長文が必要になりますが、箇条書きしただけで「日本とずいぶん違う!」ということが分かると思います。

イギリスの個人資産は「家」を中心になりたっています。値段が下がらないので、貯金するよりも割がよく資産が増えるからです。家を買うと丁寧にメンテ&改修し、家の価値が上がるよう手を尽くします。値段が上がるとその家を売り、利益分を頭金にまわして少し大きめの家を買い、数年後にまた売り…を繰り返していくのです。こうしたことが可能なのは、自宅を売却しても「無税」というのも大きいでしょう。

家族が増えたり、ライフスタイルの変化に応じて家のサイズを上げていきます。これを「プロパティー・ラダー(不動産のはしご)」と言います。そして「もうそろそろ引退しようかな」と思ったタイミングで、人生最大の家を売り、その利益でサイズダウンした家を現金で買って「あがり!」。住宅ローンからも解放される…というのがイギリスでよくある不動産との付き合い方です。

家が並んだ小道を「Mew(ミュー)」と言います。こんな素敵なミューに家が買えたらと…思いますが、正直生涯かかっても無理そうです(涙)。

コロナで一変した「買いたい家のタイプ」

現在の家に住んで6年半。駅にも近く買い物も便利な場所なので、まあまあ気に入って暮らしています。なので「どうしても住み替えたい!」と思っているわけではないのですが、2年前に「庭付きの家」に住み替えを考えた大きな理由は「収納問題を解決したい」という点でした。

今の家は収納がほとんどないので、物を全く増やせません。

もし庭付きの家に引っ越せば、収納用の小屋(物置)を置くことが出来ます。日常使いしないものを小屋に入れることができるので、たとえ住居部分が狭くても収納問題は一気に解決できる…と思ったのです。

正直、こういった小屋を1つ持ちたいだけのための住み替えです。

その後長いロックダウンを家の中に閉じこもって過ごしたこともあり、(収納問題の解決策としてだけではなく)「“庭”が欲しい」という思いも募りました。

田舎に移動すれば、今より広く、そして庭のある家に住めるかもしれません。しかし車を運転しない私と夫に、本気の田舎暮らしは難しいのです…。

そんな思いをずっと抱えていましたが、まずは「夢見ることは可能なのか?」を知るために、友人に紹介してもらった“凄腕”と評判の「モーゲージ・アドバイザー(住宅ローンのアドバイス及び銀行との仲介をしてくれる専門職)」に相談しました。その結果、まあまあ厳しい現実が見えたもの(笑)、「エリアを絞れば、何とか庭付きの家を買える…かも…しれない…!?」ということが判明。

妄想していても始まらないので、「ダメ元で、物件探しまではやってみよう」と決めました。

夢をみるぐらいはいいのかも…の内覧開始!

家の内覧のことを、イギリスでは「Viewing(ビューイング)」と言います。見るだけなら無料なので、週末に内覧のアポを入れてどんどん見ていくことにしました。

現在私は南西ロンドンに住んでいるのですが、予算と利便性から現在より少し東側のエリアに焦点を絞りました。イギリスではコロナ緩和に伴い、出勤が週1~3回ぐらいのレベルで再開しています。夫の通勤が可能で、かつ車がなくても日常の買い物に困らない場所であることは必須です。そして少しでも馴染みのあるエリアの方が良いと思い、何度も行ったことのある南東ロンドンの某地区を選びました。

南東ロンドンにある、大きな駅のある町です。ビクトリア時代の街並みが残っているところが気に入っています。

実はこのコラムに登場してもらった友人のフィル君が住んでいるエリアです。

Londonコラム・第5回「これが英国レベルのDIY!2人で作りあげた『スイート・ホーム』」に登場してもらいました。

こちらがフィル君。私の10年来の友人です。

フィル君は会社員の傍ら、投資目的の家も数軒持っている不動産のエキスパート。私達の状況をずっと相談していたこともあり、家探しの初日に同行してくれました。

この日はフィル君(左)と彼の友人グアン君(右、彼も購入物件を探し中)、私と夫の4人で2軒内覧しました。移動中、「Sale(販売中)」「Sold(売却済)」の看板を見るたびにスマホで物件情報をチェックし、エリアの値段を確認します。

数年ぶりの内覧。一軒目の家は、ギリギリですが予算内、しかもとてもきれいな見た目の家でした。やや浮かれた気持ちで、軽率にもすぐに気に入ってしまった私と夫。しかし冷静かつ不動産の知識豊富なフィル君は、中に入ったとたんに顔をしかめていました。天井近くにひび割れ発見したからです。

古い家が多いイギリスでは、ひび割れそのものは珍しくありません。ペンキが乾いてひび割れることは多いからです。しかし一目見て「これはペンキのひび割れではないかも」「構造上の問題では?」と思ったフィル君は、その後家中の壁や天井を慎重に確認。トラブルの原因になりそうな箇所を私達に説明しつつ、また家の外から建物そのものの傾き等を確認したり、写真を撮影したりしていました。

「プロは見ているところが違う…!」と素人の私達は感心しきり。

不動産屋さんが私達の会話を聞いていたのかいないのか不明ですが、「人気の物件なので、すぐに売れてしまうと思いますよ」としっかり宣伝はされました。

部屋の角を手で触り、垂直かどうかを確認。

その後、もう1軒、グアン君が予約していた内覧にも連れて行ってもらいました。

1970年代からリノベしていないと思われる家でしたが、きれいでポテンシャルが高く、内覧にもたくさんの人が来ていました。広い居間&3寝室ある上に、ユーティリティルーム(洗濯や掃除用具が置いてある部屋)もとっても広い! でも私達にはちょっと予算オーバー(涙)。

皆が確認する、2階の戸袋(天井についている四角いフタのようなもの)。これがあれば、屋根裏にアクセスできることを意味します。将来的には「ロフトコンバージョン」と言って、屋根裏をもう1部屋に改装する道も開かれるのです。

2軒の内覧の後、4人でコーヒーショップに入りました。そこで1時間ほどエリアの知識をシェアし、家探しのポイントについてフィル君からレクチャーを受けました。また一軒目の物件について、フィル君の懸念事項をしっかり説明してもらいました。彼の説明に納得がいったのでこの家のことはひとまず忘れることにしました。

コーヒーショップの後、地域の憩いの場所である巨大な公園を4人で散歩しましたが、散歩中もずーっと家探しの話でした。立ち止まっては私達に合った物件をスマホで探してくれる優しいフィル君。ありがとう♡

ジョギングコースもある美しい公園。2月中旬、イギリスにハリケーンが直撃しましたが、そのときに倒れたと思われる木がコロンと寝そべっていました。

こんな風に「我が家の家探し、part2」が始まりました。これから毎週末、内覧を続けることになります。今回は諸事情あり、物件探しの期間は「2カ月」と決めています。短期決戦、集中的に内覧し、そこで運命の物件に出会えなかったら一旦また白紙に戻す予定です。

良い物件に出会え、金額的に合意できたとしても、そこからがさらに手ごわいのがイギリスの不動産購入です。2カ月以内に物件を探せたとしても、その後の書類製作や銀行とのやりとりのプロセスは長く厳しい戦いです。今から家探しをしても秋までに入居できるか…というぐらい時間がかかります。

実は今の家を購入する際、本当に痛い目に合っています。
それだけに「もう一度家購入のプロセスをやり切れるのか?」に不安な気持ちもあります。でも力強い協力者もいるので、まずは「運命の家」に出会えるよう、せっせと内覧に通います!

日本もまだまだ寒い日が続くと思います。コロナ感染も含め、どうかご自愛ください。そして来月お目に掛る時は、平和が訪れていることを切に願っています。