日本と北欧デザインの融合「Japandi(ジャパンディ)」とは?

宮田華子 
ロンドン在住ライター。メディア製作会社に勤務後、2011年からフリーランスのライターに。デザイン、アート、建築、クラフト等を得意とし、文化&社会問題について日本の媒体に執筆。編集ユニット「matka」として、ウェブマガジンも運営している。情報経営イノベーション専門職大学(iU)客員教授。2015年にロンドンで小さなフラット(マンション)を購入。日本とは異なる一筋縄でいかない「イギリス・家事情」に翻弄される日々を送っている。 
ウェブ:http://matka-cr.com/ 
インスタグラム:https://www.instagram.com/hanako_london_matka/

※記事内容は2022年7月1日時点の情報によるものです。

6月初旬に暑い1週間がありましたが、現在は20度前後の涼しい…を通り越して「寒い」日が続くロンドンです。

右手の建物が日本大使館です。先日参議院選挙(在外選挙)に行ってきました。在外選挙の場合、日本の投票日の1週間前までに投票しなくてはならないので、投票最終日は7月3日でした。

現在、全英オープンテニス開催中です。雨で中断したりと、序盤、あまり天候に恵まれていません。6/29にはイギリス期待のエマ・ラドゥカヌ選手とアンディ・マリー選手の2人が共に2回戦敗退。イギリス的には序盤戦からややがっかりムードが漂っています。

まあまあ冷夏になりそうな今年のロンドンの夏ですが、8月末までにもう1度ぐらい夏日が続く週があるといいな…と思っている人が多い様子です。

猛暑の日本を考えると天国のような涼しさなのですが、この辺はないものねだりなのでどうしようもありません。

イギリスの夏と言えば、庭でバーベキューです。先日、友人宅の素敵なバーベキューパーティに呼んでもらいました。途中で雨もパラついたので、アンブレラの下のヒーターと焚火がありがたかったです。

==

皆様は、最近特にデザインやインテリア界隈で広まりつつある「Japandi(ジャパンディ)」という言葉をご存知でしょうか?

これは「Japan(日本)」と「Scandinavia(北欧)」を合わせた、最近生まれた言葉です。日本とデザインと北欧デザインに共通点があることは以前から言われていました。イギリスでも「日本デザイン好き」の人はほぼ「北欧デザイン好き」であり、その逆もしかり。2つのデザインには親和性があります。

例えば、イギリスでシンプルな北欧デザインを好む人は、大抵「無印良品」のファンなのです。

「MUJI UK」のインスタグラムより。こういうすっきり収納やシンプルな雑貨は、イギリスでも大人気です。無印良品はイギリスでも広く展開しておりますが、「無印」ではなく「MUJI」という名称です。

また、イギリスのライフスタイルに合う和風雑貨を多く扱った「Japan House」(外務省による事業拠点)のショップも、「北欧デザイン好き」のアンテナに引っ掛かります。

「Japan House」の店内。茶筒の展示が行われていました。

こうした現象が認知され、「Japandi」という新しい言葉が生まれました。

「Japandi」をテーマにしたショップ&飲食の複合施設「Pantechnicon」。

「Japandi」に特化した施設もロンドンには誕生済みです。それが、ロンドン中心部のBelgravia(ベルグレビア)地区にある「Pantechnicon(パンテクニコン)」。雑貨と飲食を合わせた複合施設で、2020年秋にオープンしました。

1831年に建設された白壁の荘厳な建物です。建設当時は「The Pantechnicon」という名の家具と絵画のお店用の建物だったそうです。

まずは物販の紹介から。1階と2階に日本と北欧の雑貨を販売するショップがあります。

1階(写真上)と2階(写真下)の雑貨販売スペース。

扱う商品は小物から食器、自転車、そしてファッションアイテム、アクセサリー、ビューティープロダクツまで多岐に渡ります。

日本製の鯛の形の石鹸。プレゼントに喜ばれそうです。

デンマーク製のアクセサリーのコーナ

特筆すべき点は、デザイン性だけでなく、イギリスのライフスタイルに合う商品を厳選している点です。例えばこちらは有田焼の食器(↓)。

紅茶&コーヒー文化のイギリスではマグカップは必須です。加え、イギリスの食生活では小皿や茶碗型よりも平皿を多用します。その辺を理解した上でのセレクションだと分かります。

コロナ禍以降、キャンプ人気はイギリスでも高まる一方です。日本の「スノー・ピーク」のキャンピンググッズ。多くの人が足を留めるコーナーです。

メンズウェアは北欧製のものが充実している印象ですが、手前の自転車は日本製「tokyobike」のものです。

和と北欧の境界線をあえて引かない陳列です。商品同士を上手になじませ、統一感を持ったディスプレーが絶妙です。

北欧ダイニングから本格的和食まで、充実した飲食施設。

この建物は地下1階~地上4階まで5フロアあるのですが、その中に6店舗の飲食店(レストラン、カフェ、カクテルラウンジ)があります。

本格的北欧ダイニングが楽しめる「Eldr」。素材を生かした料理と美しい盛り付けが話題です。

1階にあるカフェ「Cafe Kitsune」のチキンカツサンドと卵サンドはすごいボリュームです。環境に配慮した包み紙やパッケージを使用しています。

本格派和食レストラン「Sachi」。連日予約でいっぱいです。

6月30日にはPantechniconの中庭にポップアップ・バー「ROKUジン・サマーテラス」もオープン。先日お披露目会が行われたので、行ってきました。

サントリーのクラフト・ジン「ROKU」入りのカクテルで作られた「カクテルかき氷」と焼きたてのタコ焼きが楽しめる夏季限定の野外バーです。

ビルの谷間に緑があしらわれた、心地よい中庭です。

お天気がやや怪しい日だったにも関わらず、たくさんの人が来ていました。

来場者のお目当ては、パンテクニコンのヘッド・ミクソロジストである鳥潟彦人さんが作り出したジンを使ったかき氷カクテルです。

カクテルかき氷を1つ1つ丁寧に手作りする鳥潟さん。カクテルカウンターの前には長蛇の列ができていました。

列に並んで手に入れた「ダージリン配合のジンとイチゴのかき氷」と「スイカと紫蘇のカクテル」。

初めて食べるかき氷カクテル。一口食べるとほのかな紅茶の風味とイチゴの優しい甘さが広がる絶品でした! そしてスイカと紫蘇のカクテルは、爽やかな夏の味が口に心地よく、いくらでも飲めてしまう危険な美味しさです。

ほどなくして焼きたてアツアツのタコ焼きも登場。

皆が「奪いあい」するほどの大人気だったタコ焼き。行木に盛られていたこともあり、夏祭りを思い出しました。

口の中がタコ焼きでアツアツになった素晴らしいタイミングで「メロン&抹茶のかき氷カクテル」もいただくことが出来ました。

ROKUジンにメロンと抹茶、そしてフィノ(スペイン産のシェリー酒)が入ったかき氷カクテルです。

メロンの甘さを抹茶とフィノがキリリと引き締め、これまた絶妙の味わい。

美味しいカクテルに酔ったころ、青空も見えてきました。

ロンドンの夏は22時ぐらいまで明るいほど陽が長いのです。夏の間にこのサマーテラスに必ずまた訪れ、気持ちの良い夏の夜を満喫したい…と思った楽しい夜でした。

===

現在イギリスの水際対策はすっかりなくなり、来英はとても簡単になっています。しかし海外から日本への入国には様々なルールがあると思います。

加えウクライナ戦争が終わらないため、フライトもキャンセルやスケジュール変更が続き、渡航者に混乱を与えています。

心置きなく海外旅行を楽しめつようになるまでにはもう少し時間がかかりそうです。早く「行きたい場所に自由に行ける」日が戻ってきてほしいと願っています。

そして日本の猛暑&熱波…。毎日ニュースで確認しては、心配しています。
どうか皆様、ご自愛ください。