インテリア好きにはたまらない、ロンドン秋のイベントとは?

宮田華子 
ロンドン在住ライター。メディア製作会社に勤務後、2011年からフリーランスのライターに。デザイン、アート、建築、クラフト等を得意とし、文化&社会問題について日本の媒体に執筆。編集ユニット「matka」として、ウェブマガジンも運営している。2015年にロンドンで小さなフラット(マンション)を購入。日本とは異なる一筋縄でいかない「イギリス・家事情」に翻弄される日々を送っている。 
ウェブ:http://matka-cr.com/ 
インスタグラム:https://www.instagram.com/hanako_london_matka/

みなさま、こんにちは。10月末のハロウィンを終え、街並みも気持ちも一気にクリスマスに向かう季節がやってきました。11月第2週から、ロンドンのストリートに順次クリスマス・イルミネーションが点灯し始めます。

クリスマスについては来月たっぷりレポートしたいと思いますが、今回は(ちょっと前のお話で恐縮ですが)9月にロンドンで開催された「ロンドン・デザイン・フェスティバル」についてお伝えします。

毎年9月に開催される「ロンドン・デザイン・フェスティバル」

ロンドンには「〇〇の街」という形容詞が多々ありますが、「デザインの街」もその1つです。イギリスはデザイン関連産業が盛んな国と言われており、特にロンドンに住んでいるとそのことを実感する機会が多々あります。「デザイン」にフォーカスした展覧会やイベントが本当に多く、どんどん増えてきていると感じているからです。

ロンドンのデザインイベントの中でももっとも大きなものが、毎年9月に開催される「ロンドン・デザイン・フェスティバル」です。これは1つのイベントではなく、9月中旬の1週間にロンドン各所で多数開催されるデザイン関係イベントの総称です。大きなデザイン展示会から、家具店、雑貨店などの店舗で開催されるイベントまで大小幅広く、街をあげてデザインをフィーチャーする1週間なので「デザイン・ウィーク」と呼ばれることもあります。

この時期になるとソワソワするのは「庭もベランダもないけれど」(第2回コラム)でご紹介した「ロンドン・クラフト・ウィーク」の時期と同じですが、現在のところデザイン・ウィークの方が大きな規模で開催されています。

今年は大きな展示会2つに行ってきました。

ラグジュアリー・インテリアの展示会「デコレックス」

1つ目はインテリアデザイナーや建築デザイン会社の人を対象とし、41年もの歴史があるインテリア展示会「デコレックス」です。ラグジュアリー系インテリアの展示会としてはイギリスでもっとも有名かつ権威のあるイベントです。イギリスのみならず欧州をメインにさまざまな業者が出展し、インテリア&建築デザイナーたちに自社製品やサービスをアピールするビジネスの場です。

今年も南ロンドンにある「サイオン・パーク」内に作られた巨大な簡易展示場で開催されました。

会場設営中(昨年の写真です)。

「デコレックス」に行くのは初めてだったのですが、入ってすぐの場所にあるラウンジを見ただけで、この展示会がラグジュアリー系なことはひしひしと伝わってきました。

「インテリア・デザイン」と一口に言っても、内装デザイン、家具、照明、テキスタイル、資材、カーペット、雑貨、オブジェなど、関連するアイテムやカテゴリーは本当に多岐に渡ります。

こちらはキッチンデザイン会社の展示。

このベッドの展示は注目を集め、かなりインスタにアップされていました。水色の壁とシンプルなベッドのデザイン、最小限度の装飾の絶妙なコントラストの勝利ですね。

木工家具を中心としたファニチャーデザイン会社のブース。こんな棚が我が家にあったら、ディスプレーをする楽しみが増えそうです。

タイルやオブジェなどのセラミック製品に加え、ガラス製品や家具を展示していた「Reiko Kaneko」のブース。レイコさんは日本生まれ、イギリス育ちのクリエイター。

今回気づいたのは、明るく鮮やかな色使いの展示が多かったことです。ここ数年は環境への考慮や持続可能な社会への関心から、ラグジュアリー・インテリアであってもどこかナチュラル感を打ち出したインテリアが人気な印象がありました。もちろん現在もナチュラル・テイストは人気なのですが、環境を意識した素材・資材はすでに定着していているので、その上で色やデザインの流行がより自由に反映しやすくなっているのでは?と思いました。

各ブースの内装も素敵ですが、スタッフもお洒落な人が本当に多かったのでつい見とれてしまったり。「ブース内装と服をコーデしているの!?」と思う展示も多数ありました。

ブースでビジター対応をする人たちは、ディスプレーのプレゼンター。彼らの佇まいも展示の大事な要素なのだと痛感しました。

印象的な作品が多かった「デコレックス」ですが、室内装飾用のアート作品(オブジェ)が充実しているのも個人的には見どころでした。

錆ついたこのお風呂は、入浴用ではありません。オブジェとしての作品です。

コンテンポラリー・デザインが楽しい「ロンドン・デザイン・フェア」

もう1つの展示会は、「ロンドン・デザイン・フェア」です。ロンドン中心部のやや東、トレンド地域として知られるショーディッチ地区にあるイベントスペース「オールド・トルーマン・ブリューワリー」で毎年開催されています。

こちらは「デコレックス」と比較するとより斬新かつコンテンポラリーな作品が多いのが特徴です。日常的に使用できる雑貨の展示も多く、(「インテリア」と言うよりも)より「デザイン」にフォーカスしています。会社だけでなく個人や若手クリエイターの出展も多く、ブースも大小さまざま。会場で購入可能な商品も多く、インテリアや建築のプロだけでなくより幅広いデザイン関係者や一般客も多く訪れます。平たく言ってしまうと、「イマドキ感」が感じられる展示会です。

この日はあいにく雨だったのですが、入り口には長蛇の列が。

(「デコレックス」に較べると)ナチュラル感のある展示が多いものの、例年に比べてカラフルな色使いのディスプレーが多い印象でした。

スウェーデンの共同ブース。「シンプルインテリア」のイメージがあるスウェーデンですが、今回は何とピンク一色でブースを染め上げました。なかなか思い切った色使いです。

イタリアの共同ブースでのキッチンレンジの展示。イタリアは毎年カラフルな色味が多い印象。今回は黒い縁取りに黄・オレンジ・ピンクの格子模様で、メリハリが効いています。

もちろんナチュラルテイストの展示も健在です。ホームセンターで簡単に買えそうな角材や材木でブースを作り上げています。住居でも応用できそうなので、ナチュラル感を出したい時のヒントに。

白樺をパーテーションに使用し、ガラスの透明感を引き立たせています。

こちらのキャビネットはナチュラルとカラフルをうまく融合させています。多くの人た立ち止まって眺めていました。

若手の登竜門的意味合いもあるフェアだけに、今回も今までに見たことのないユニークなデザインの作品とたくさん出会うことができました。

まるで動物?のような形状の椅子。リビングにあると目を引きそう。

こちらの丸いプラスチックのリング。何だか分かりますか?

実は天井からつるすタイプの一輪挿しなんです。

切り口を水の入った小さな筒に入れることで、給水できるようになっています。

小さなブースが多いのですが、同じようなスペースでもまったく違う印象に仕立てることが可能です。

黒、白、黄色、それぞれのテイストを活かしています。

パーテーションで区切った1ブースとしてはこの大きさ(↓)がもっとも小さかったのですが、

韓国のホウケイ酸塩ガラス作品ブランド「clear b」のブース。

スタッフ(出展者)が立つのがやっとだったり。

「デコレックス」同様、スタッフの服とディスプレーの色をコーデしている!?と思わせるブースもたくさんありました。

徹底的にアイテム数を絞った例。

セーターのモスグリーンは壁の色と合わせ、オレンジのスカートはブースそのものの差し色に。

スカートと花の色が合っているのは偶然かも?ですが、人とスペースのトータルコーディネートがうまくいっていると感じました。

展示会での刺激を我が家インテリアにも応用したい

展示会に行くとトレンドが確認できるのはもちろんのこと、自分の発想にはないインテリアやディスプレーを見ることができるので刺激をビシバシあびることができます。

私自身はここ数年、「ひたすらミニマル(=物を置かない)」と「できるだけナチュラル系」で止まっているので、我が家は基本、地味色一辺倒です。でも今回の「カラフル」には少し触発されました。素材を選んで少しだけインテリアに差し色を入れるのも良いのでは?と思い、もう少し寒くなったら床に敷くラグに明るめの色を選んでみようかなと思い始めています。

毎シーズン、こんな風に新しいインテリアやデザインのアイデアをくれるイベントがあるロンドン。改めてインテリア好きにはたまらない街なんだとかみしめながら会場を後にしました。

そんな充実の「デザインの秋」を終え、ロンドンは賑やかで楽しい冬にいよいよ突入です。