こだわりギフトを探しにビッグ・デザイン・マーケットへ

小林夕子 
オーストラリア・メルボルン在住会社員。アメリカと日本で幼少期を過ごした後、日本では映像関連会社に勤務。現在はメルボルンで通訳・翻訳業務に従事している。余暇の楽しみは映画館、美術館、図書館、マーケット巡り。

皆さま、新年明けましておめでとうございます!2019年から書かせていただいているこの連載を、懲りずに読んでくださりありがとうございます。皆さんが、穏やかな気持ちで新年を迎えられたことを願っています。

12月中旬頃からグッと気温が上昇したオーストラリア。メルボルンで40℃の猛暑日を記録したある日、仕事の昼休みに外出すると空が霞んでいて、空気がいつもより淀んでいました。

会社の同僚の話によると、これだけ気温が上昇するのは、北からの熱風にさらされているということなのだそう。つまり、ニューサウスウェールズ州やクイーンズランド州で猛威を振るっているブッシュファイア(山火事)の灰と煙が、メルボルンまで届いているとか…。

「夏だ!」と浮かれていた気持ちが急速に萎んでいく中、今自分が置かれている環境、そして家族や友人に感謝しなくてはと気付かされた瞬間でした。

そこで、旧年お世話になった友人に贈るギフトを探しに「ビッグ・デザイン・マーケット」に出掛けてきたので、今回はこちらのマーケットについてご紹介したいと思います。

「ビッグ・デザイン・マーケット」とは

シドニーとメルボルンで毎年末に3日間限定で開催されるビッグ・デザイン・マーケット。オーストラリア国内外から集まったアーティストによる、雑貨や日用品、ファッション、インテリア、スキンケア、キッズ用品を扱うブースが200以上出店されるとあって、例年クリスマス・ギフトを求めるメルバーニアン(メルボルンっ子)で賑わっています。

このような大規模な屋内マーケットがどこで開催されるのかというと、メルボルンの会場はなんと世界遺産に登録されているロイヤル・エキシビション・ビル(Royal Exhibition Building)。19世紀にメルボルン万博が開催された場所です。

快晴に恵まれた2019年のビッグ・デザイン・マーケット。ロイヤル・エキシビション・ビルに隣接するカールトン庭園も世界遺産に登録されています。

「世界遺産の建物ってそんな気軽に利用できるの…?」と数年前に初めて来たときは軽く衝撃を受けました。このような伝統のある場所に、現代のアーティストが集結していると思うと、いつも不思議な感覚にかられますが、19世紀の万博も、21世紀のデザイン・マーケットも「見本市」であるという点では共通しているといえますね。

入場料は5豪ドル(約380円)。ここで集まったお金は会場の維持費などにも使われているそうです。

目を惹くホール中央のモビール作品は、メルボルン在住のデザイナー、ペニー・ファーガソンさんによるもの。

私は最終日の3日目に足を運んだので、もう空いてきているかなと思ったのですが、とんでもない。予想以上の人混みと熱気で興奮してしまい、あれもこれもと目移りして大変でした。ここでは、私の中で特に印象に残ったブースをご紹介しましょう。

作り手の思いが感じられるマーケット

まずはオーストラリア原産のネイティブ・プランツ(ユーカリなど)や野鳥をモチーフにした絵で人気を集めているデイナ・キンターさんのブース。彼女の顔写真を見たことがあったので、遠くからブースに立つその姿が見えた瞬間、駆け寄ってしまいました。
渋めの色使いが特徴的なデイナさんの作品。その色合いのイメージそのままに、とても穏やかで柔らかい雰囲気の方でした。

私に写真の腕がないばかりに、目をつむった写真しか撮れなかったことを、デイナさんどうかお許しください。

彼女を知ったきっかけは、私が大好きなオーストラリアのファッション・ブランド、Gormanとのコラボレーションで発表した2017年の秋冬コレクションでした。

そのことをデイナさんに伝えると、お互いにそのコレクションの中でどの服が好きか、どの服を持っているかといった話でひとしきり盛り上がりました。本当はこの日、デイナさんとコラボしたGormanの服を着ていこうか迷っていたのですが、私が持っているのは冬物ばかりだったため、断念してしまったんです。
次回、もう少し涼しい日だったら、それを着て彼女に会いに行きたいですね。

続いては、オーストラリアの生き物をモチーフにしたイラストが人気のデザイナー、レネー・トレメルさんのブースへ。
ここでは、友人用にクリスマス・オーナメントを購入しました。毎年デザインが変わるこのシリーズを彼女に贈るのは、実は今年で3回目!
3年前に子供が生まれた記念に本格的なツリーを購入したと聞き、「娘さんと一緒に飾りつけをしてくれると嬉しいなぁ」という気持ちを込めて、それから毎年ひとつずつプレゼントしています。

今年は「オーストラリアの生き物と旅する子供」がテーマ。 

「写真撮っていいですか?」と訊ねると、「どうぞ!」と言いながらしゃがんでしまったスタッフさん2人。「ぜひ写真に入ってください」とお願いすると、このような満面の笑顔で応えてくれました。

そして、日本テイストの雑貨を展開するSkimming Stonesもまた素敵。ブースに並べられた藍色のお皿が素敵でしばらく見入っていると、デザイナーのトニーさんから気さくに話しかけてくれました。

日本人かな?と思ったのですが、そうではないようで。日本のアートに惚れ込んで、日本にインスパイアされた作品を作り続けているのだそうです。お皿や湯飲みは実際に日本で焼いているとか。和テイストにアレンジされたオーストラリアの鳥のピンバッジやコースターが素敵だなぁと悩んだ末、2羽の黒鳥をモチーフにしたピンバッジを友人の誕生日プレゼントとして購入しました。

Photo courtesy of Skimming Stones https://www.skimmingstones.com.au

「黒鳥のつがいは一生続くことを意味しているので、贈り物に向いていますよ」とそっと教えてくれたトニーさん。贈る相手は女友達なんだけど、友達付き合いが一生続くという意味に捉えれば…ま、いっか!
このように、作品が作られた経緯についてなどを直接聞くことができるのが、ビッグ・デザイン・マーケットの醍醐味なんです。

こちらは、和テイストのミニマルなデザインが目を惹く、アンナ・シーンさんのテーブルウェアを中心としたブース。

棚の一番上にある白地に青のデザインが施されたカップが気になって、手にとって見ていたら、「すべて手作業で筆入れしているので、一つひとつ違う味わいを楽しんでね」と、アンナさんが声をかけてくれました。

次に、シンプルで上品な布張りのノートが魅力的なWrite to Me。「明日のために今を書き留める」をコンセプトに、次の世代に残せるノートや日記帳を展開しています。

子供の成長記録やレシピノート、妊娠記録、結婚式のゲストブック、ペットの成長記録、旅日記など、ピンポイントな用途の商品もユニークで、ギフトに喜ばれそうな物ばかり。

日本ほど洗練されたデザインのノートが充実してないここオーストラリアにあって、装丁が美しくて丁寧。私もギフトの用事があるときに重宝しているお店です。

こちらは、「作家さん本人のサイン入り」というマーケットならではの特典に惹かれて立ち寄った、児童書をメインに扱うBerbay Publishingのブース。

独立系出版社とあって、メッセージ性のあるジェンダーフリーの作品が多い印象を受けました。調べてみると、2017年に開催されたボローニャ国際児童書展にて「Best Children’s Publishers of the Year(オセアニア部門)」を受賞したとか。
こういった独立系出版社にはがんばってもらいたいという気持ちも込めて、友人の息子さん用に絵本を購入しました。

色鮮やかなこちらAngus & Celesteのブースは一際賑わっていて、写真を撮るのも一苦労。特にオーストラリアのネイティブ・プランツのデザインを施した花器とお皿は、オーストラリア政府御用達だとか。

「カラフルな人のためのセラミック」をコンセプトに、「育てて(植木鉢)盛って(お皿)飾る(花器)」というテーマに沿って作品展開しているストーリーに心惹かれました。

環境に配慮したエコ・プロダクトも

例年に増して、「サステイナブル(持続可能)」をキーワードとしたプロダクトが目立つ印象を受けた2019年のデザイン・マーケット。中でも、オーストラリア原産の植物エキスを使用したオーガニック・スキンケア・プロダクトを販売しているLeifのブースには人だかりができていました。

ギフト・セットがセールでも70豪ドル(約5,300円)と少しお高めですが、オージーが大好きなローカル産(Locally sourced)かつ100%ヴィーガン(動物実験なし)とあって、購入していくお客さんが多いようです。

続いては、ビーワックス(蜜ろう)でできたフード・ラップを販売するHoneybee Wrap

オーストラリアではここ数年、驚くスピードでシングル・ユーズ(使い切り)の紙・プラスチックの排除が進んでいます。そこで注目されているのが野菜や果物、パンなどの食材を包む再利用可能なラップなのだとか。水洗いすれば1年ほど繰り返し使うことができるそうです。

余談ですが、オーストラリアでは大手スーパーに続いて、最近では洋服・雑貨屋も紙・プラスチック袋を廃止、エコバッグの購入やマイバッグの持ち込みを推奨するところが増えてきました。

ローカル・テイスト溢れる飲食ブースでランチ休憩

だいぶ歩き回って疲れたなと思ったら、ちょうどお昼時だったのでひと休み。前に来たときは、フライドポテトやホットドッグなどジャンキーな食べ物(それはそれでおいしいんですけどね)が多い印象でしたが、今回はヘルシー系の飲食ブースが目立ちました。

その中から、今回はメルボルン中心街で多く店舗を展開しているEarl Canteenのケイルやインゲン、ブロッコリー、グリーンピース、枝豆が入った超ヘルシーなサラダをテイクアウト。

屋内の飲食エリアは混んでいたので、外のカールトン庭園付近の芝生の上でいただきました。

屋内の飲食エリアは大賑わい!

この日は蒸し暑かったせいか、Earl Canteenのサラダに加えて会場外で販売されていたアイスクリームが飛ぶように売れていましたよ。

オーストラリア人は老若男女を問わずアイスクリームが大好き。夏のイベントにはアイスクリーム・バンが欠かせません。

アイスクリームに惹かれつつも、食後はコーヒー派の私は、メルボルンを代表するカフェのひとつ、St. Aliのブースに直行。会場の一番奥にあるにもかかわらず、すごい行列!久々に飲んだSt. Aliのソイ・フラット・ホワイトは安定のおいしさでした。

ボーッとコーヒーを飲みながら、キッズスペースで塗り絵や工作に夢中になる子供たちを見て癒される私。年々、家族連れにも優しいイベントになってきているなぁと、ほっこりした気分になりました。

そして帰宅後、自宅で購入したものを広げてみると、「あれ、もっと買ったような気がしたけど…?」と一瞬思いましたが、きっといろいろなブースを周って実際に買ったもの以上に充実した時間を過ごせたからでしょう。

おいしいお酒と食事を囲んで、この日ビッグ・デザイン・マーケットで出会ったアーティストについての話に花を咲かせながら、友人たちにこのギフトを贈りたいなと思います。

そんな私の近しい友人に語りかけるように、今年も皆さんにメルボルン・ライフについてお届けしたいと思います。今年もどうぞよろしくお願いいたします。

2020年が皆さんにとって、心に残る1年となりますように!

今回紹介したイベント:

ビッグ・デザイン・マーケット
https://melbourne.thebigdesignmarket.com